研究課題/領域番号 |
25860055
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
林 康広 帝京大学, 薬学部, 助教 (70582857)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HIV / スフィンゴ脂質 |
研究概要 |
ヒト免疫不全ウィルス (HIV) は、近年、最も良く研究されてきたウィルスの一つである。HIV感染機構の解明のために様々な感染測定法が開発されており、Cell-Cell fusion assay は、迅速かつ安全にHIV膜融合を測定できる方法である。私たちは本assay系を用いて脂質代謝酵素の新しい機能を探ることを目的とした。すると、スフィンゴミエリン合成酵素SMS1, SMS2ダブルノックアウトマウスの胎児繊維芽細胞 (ZS細胞) にSMS2を恒常的に発現する再構成細胞 (ZS/SMS2) はZS細胞と比較して有意に膜融合効率が上昇した。興味深いことに、SMS1再構成細胞 (ZS/SMS1)ではZS細胞と同程度の膜融合効率であった。また、SMS2をノックダウウンしたZS/SMS2細胞では膜融合効率が低下し、SMS2活性残基変異体(ZS/SMS2-H229A)の発現細胞においても膜融合効率が上昇したことから、SMS2タンパク質そのものの機能により膜融合が促進されていると考えられる。HIV感染において、アクチン重合に依存したHIV受容体の集合が重要であることが知られている。そこで、細胞間膜融合におけるアクチン重合を調べたところ、SMS2 発現細胞は、HIV-1 Env発現細胞との細胞間の接点においてアクチン重合が増加していた。これはSMS2がアクチン繊維と相互作用することで重合を促進しているのではないかと考えている。SMS2が、どのようにしてアクチン再編成を制御しているかを明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SMS2過剰発現、およびノックダウンの実験よりSMS2がHIVエンベロープを介した膜融合に関わっていることが明らかになった。また、SMS2がアクチン重合に関わっていることが示唆できる結果をえており、SMS2を介したHIV膜融合機構が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
SMS2がアクチン編成に、どのように関与するのかを明らかにしていく。また、SMS2の立体構造を明らかにするために大量発現・結晶化を行っていく予定である。結晶化がうまくいかない場合は架橋剤を用いてSMS1, SMS2のアミノ酸残基(リジン、システイン)の距離を明らかにし、おおまかな構造を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていくうえで必要に応じて研究費を使用してきたため、研究計画に変更はないが、当初の見込み額と使用額が異なったため。 研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含めて、当初予定していた通りに研究計画を進めていく。
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