研究課題
エンベロープウィルスは、宿主細胞と自身の脂質二重膜を融合することで宿主細胞に侵入することから、脂質代謝酵素はウィルス感染に関与することが考えられる。そこで、HIV-1 エンベロープ (Env) を介した膜融合を迅速かつ安全に測定する cell-cell fusion assay を用いて、細胞間膜融合に関わる新しい機能を持つ脂質代謝酵素を探った。すると、スフィンゴミエリン (SM) 合成酵素 Sms1, Sms2 KO マウス由来の胎児繊維芽細胞 (ZS細胞) に Sms2 を恒常的に発現する再構成細胞 (ZS/Sms2) は、ZS 細胞や Sms1 再構成細胞と比較して HIV-1 Env を介した膜融合の効率が高かった。興味深いことに、Sms2 の活性残基変異体 (H229A) を発現する細胞においても、Sms2 と同様に膜融合効率が増加したことから、Sms2 が産生する SM ではなく、Sms2 そのものが HIV-1 Env を介した膜融合に関わることが示唆された。最終年度において、免疫沈降および細胞内局在を調べたところ、Sms2 は HIV-1 受容体 (CD4) と補助受容体 (CCR5/CXCR4) と相互作用し、形質膜上で共局在することがわかった。また、HIV-1 Env 発現細胞で刺激した ZS/Sms2 細胞は、チロシンキナーゼ Pyk2 のリン酸化が一過的に増加し、かつ、その細胞間接点においてアクチン重合の増加が観察された。以上の結果から、Sms2 は形質膜上で HIV-1 受容体・補助受容体と相互作用することで、HIV-1 Env を介した膜融合の効率に影響を与えることが示唆された。
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