研究課題
若手研究(B)
申請者はこれまでに、脳の細胞外マトリクス成分であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの糖鎖構造を改変することで神経可塑性が制御できることを明らかにしたが、その詳細な分子機構は未だよく分かっていない。コンドロイチン硫酸鎖の構造変化によって、抑制性神経細胞の成熟に必要なOtx2タンパク質の蓄積が低下することから、特定のコンドロイチン硫酸がOtx2と直接結合する可能性を検証した。別の研究グループにより高硫酸化コンドロイチン硫酸鎖がOtx2と結合することが報告されたが、遺伝子改変マウスを用いた申請者の実験から、高硫酸化コンドロイチン硫酸鎖がOtx2の蓄積に必要でないことが判明した。さらに、これまでエピトープの不明であった抗コンドロイチン硫酸鎖抗体によって認識されるコンドロイチン硫酸鎖がOtx2と共局在することを示した。そこで、この抗体が認識するコンドロイチン硫酸鎖の構造決定を試みた。申請者は、コンドロイチン硫酸鎖の生合成に関わるある酵素遺伝子を欠損したマウスでは、この抗体によって認識されるコンドロイチン硫酸鎖が激減することを見出した。この遺伝子欠損マウスのコンドロイチン硫酸鎖は野生型マウスと比べて鎖長には変化が見られなかったが、還元末端の構造に違いが見られた。つまり、Otx2が結合するコンドロイチン硫酸鎖は、還元末端に特定の構造をもっており、この構造はより非還元末端側に存在するOtx2結合部位の合成に必要であることが示された。
3: やや遅れている
Otx2の蓄積に高硫酸化コンドロイチン硫酸が関与しないこと、および、特定のコンドロイチン硫酸鎖合成酵素がOtx2結合性糖鎖の発現に必要であることが分かったことは、本研究を進める上で大きな進展であった。しかし、Otx2結合性糖鎖構造の完全決定には至っていない。
今後は脳から抽出したコンドロイチン硫酸鎖とOtx2の直接的な結合をBIAcoreシステムによって解析し、Otx2との結合に必要なコンドロイチン硫酸鎖鎖の最小構造の決定する。さらに、この糖鎖がシナプス可塑性に及ぼす影響を検討する。
申請者が所属機関を移ったことに伴い、研究環境を整備する必要があり、当初の予定より研究が遅れたため。現在、研究環境が整い、順調に研究が進展しているため、25年度購入予定であった消耗品を26年度に購入し、当初の予定に沿って研究を進める。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Nature Communications
巻: 4 ページ: 2740
10.1038/ncomms3740