研究課題/領域番号 |
25860061
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
毛利 友美 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20572960)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Pim-1 / STAT3 / IL-6ファミリーサイトカイン / 心臓 / 血管新生 |
研究概要 |
これまでに、IL-6ファミリーサイトカインが、心筋組織幹細胞の血管内皮細胞への分化誘導し、心筋組織の恒常性維持に寄与することを明らかにしてきた。本研究では、組織幹細胞を標的として、心筋組織内の血管形成を誘導することにより、心筋組織の修復・再生を促すという治療戦略を確立することを目的とする。この目的を達成するために、心筋組織幹細胞の内皮細胞分化誘導に必要であるPim-1の下流シグナルや、心筋組織幹細胞の内皮細胞への分化を誘導する因子の同定を行い、心筋組織幹細胞の内皮細胞への分化に関して、詳細なシグナル伝達機構を明らかにし、組織幹細胞を用いた血管再生治療の創薬標的を同定する。 まず、心筋組織幹細胞の内皮細胞分化誘導過程におけるPim-1の下流シグナルを明らかにするために、心筋組織幹細胞におけるPim-1の標的因子(基質)の同定を試みた。具体的には、成体マウス心臓由来細胞より磁気細胞分離装置を用いて調製したSca-1陽性心筋組織幹細胞において、野生型Pim-1発現アデノウイルスベクターによるPim-1遺伝子導入後にリン酸化される分子の探索を行うことにした。平成25年度は、野生型Pim-1のクローニングを行い、クローニングした野生型Pim-1発現アデノウイルスベクターの作製に成功した。 また、心筋組織幹細胞の内皮細胞への分化を誘導する新たな因子の同定を行うために、心筋組織幹細胞においてSTAT3シグナルを活性化するサイトカインや成長因子の探索を行った。その結果、IL-6ファミリーサイトカインのひとつであるIL-27が、心筋組織幹細胞においてSTAT3シグナルを活性化することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋組織幹細胞におけるPim-1の基質の同定に関しては、Pim-1発現アデノウイルスベクターの構築に時間を要したため、やや遅れている。一方で、心筋組織幹細胞の内皮細胞への分化を誘導する新たな因子の同定に関しては、IL-27を候補分子として見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作製したPim-1発現アデノウイルスベクターを用いてPim-1遺伝子を導入した心筋組織幹細胞においてリン酸化される分子の探索を行い、Pim-1の標的分子を明らかにする。さらに、Pim-1の標的因子として同定した分子に関して、siRNAや特異的な阻害剤、及び、ドミナントネガティブ型(抑制型)アデノウイルスベクターを用いてその発現あるいは活性を抑制した場合に、心筋組織幹細胞の内皮細胞への分化効率が低下するかどうかをin vitroで検討し、Pim-1基質の分子の内皮細胞分化への関与を明らかにする。 また、心筋組織幹細胞においてSTAT3の活性化を誘導することが明らかとなったIL-27 サイトカインシグナルに関しては、心筋細胞分化や細胞増殖への影響を解析し、IL-27サイトカインシグナルの心筋組織幹細胞に対する作用を解明する。
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