研究課題
心筋細胞は生直後に増殖能を失うため、心臓は再生能力が低い臓器と考えられてきた。しかしながら、近年、心筋組織内にさまざまな組織幹細胞が存在することが報告され、その細胞機能に注目が集まっている。我々は、これまで、心筋組織幹細胞のひとつであるSca-1陽性細胞が、IL-6ファミリーサイトカインの刺激により血管内皮細胞に分化すること、また、その過程にタンパクリン酸化酵素であるPim-1が発現誘導されること重要であることを報告してきた。我々は、Pim-1が発現誘導されるメカニズムとしてシグナル伝達分子STAT3の重要性を既に明らかにしてきたが、Pim-1の発現がどのようにして心筋組織幹細胞を血管内皮細胞に分化誘導するかに関しては不明であり、本研究では、STAT3/Pim-1シグナルの機能解析を行った。具体的には、Pim-1がセリン・スレオニンキナーゼであることから、その基質となる分子の同定を試みるという戦略を立てた。まず、Pim-1を発現するアデノウイルスベクターを用いて心筋組織幹細胞にPim-1遺伝子を導入し、リン酸化されるタンパク質を探索した。その結果、Pim-1によってリン酸化される可能性が示唆されるタンパク質が複数見つかったが、そのうちの一つの分子を同定し得た。今後、当該分子が、Pim-1を介した、心筋組織幹細胞から血管内皮細胞への分化に関与しているかどうかを検討する予定である。
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Cytokine
巻: 75 ページ: 365-372
doi: 10.1016/j.cyto.2015.06.009.