研究課題/領域番号 |
25860065
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
荒木 信 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (20552904)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬学 / オートファジー / 筋細胞障害 |
研究概要 |
平成25年度はGGPPの修飾を受けてmTORC1の活性を調節しているmTOR結合タンパク質を同定し、その細胞内局在などを明らかにすることを目指した。まず、アフィニティータグを用いてtandem affinity purification(TAP)法で複合体タンパク質を精製するために、FLAG-HAタンデムタグ付mTOR発現プラスミドを作製した。次にtag付mTORタンパク質の発現を確認するために、横紋筋肉腫由来A204細胞へのLipofectionによる遺伝子導入を試みた。A204細胞は遺伝子導入効率が低いため、複数のLipofection試薬を用いて条件検討を行った。その結果、培養期間の短いA204細胞に対してLipofectamin 3000試薬を用いた時に、tag付mTORの発現が検出できた。また、恒常的に発現する細胞のクローニングを行ったが、選択薬剤に対しては耐性を示すもののtag付mTORの十分な発現が見られる細胞は得られていない。当初の予定では相互作用するタンパク質の同定までを予定していたが、現在のところ終了しておらず、平成26年度も相互作用するタンパク質の同定を継続して行う。 GGPP依存的なmTORC1の活性調節機構を明らかにするために別のアプローチとして、スタチン・GGPPの遺伝子発現への影響についてDNAマイクロアレイで網羅的に解析を行った。その結果、スタチン・GGPP依存的なオートファジー、細胞死誘導と関連して発現変動を起こす遺伝子群が明らかとなった。その中で、骨格筋の分化を制御する転写因子が関連遺伝子の共通上流として予想された。今後、スタチン・GGPP依存的なオートファジー、細胞死誘導機構への関与を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成25年度中にmTORと相互作用するタンパク質の同定を終えている予定であったが、現在のところ同定までには至っておらず若干遅れている。しかし、DNAマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析により、オートファジー関連遺伝子と同様の発現変動を示す遺伝子群を同定できたことは、GGPP依存的なmTORC1新規調節機構の解明に役立つ重要な成果である。以上のことより、全体としての達成度は、若干の遅れはあるが、平成26年度に取り戻すことができる内容であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度中に検討を行った遺伝子導入の条件でtag付mTORを一過的に発現させて、TAP法によりmTORと相互作用するタンパク質を同定する。TAP法のサンプルを作製する際には、スタチン・GGPPを添加してから相互作用を起こすタイミングが不明なため、複数の条件でサンプルを調製する。また、一過性発現では発現量が一定とならないことから、恒常的にmTORを発現する細胞の作製も継続しておこなう。mTORと相互作用するタンパク質の同定後、当初計画どおり、同定した遺伝子の発現量の変化、mTORと同定因子の相互作用や、細胞内局在などを解析していく。さらにsiRNAによるノックダウンなども行い、スタチン依存的なオートファジー、細胞死誘導への関与を明らかにする。 これと平行して、DNAマイクロアレイの結果からオートファジー関連遺伝子の共通上流として予想された転写因子についても、強制発現やsiRNAによるノックダウンを行いスタチン・GGPP依存的な現象への関与を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していたtag付mTORの発現系の構築が難航したため、GGPP依存的にmTORと相互作用するタンパク質の同定まで進まず、外部委託で予定していた質量分析を行うことができなかった。その分の予算が未使用のため次年度への繰越が生じた。 繰越使用額はGGPP依存的にmTORと相互作用するタンパク質を同定するための質量分析の解析委託費用に予定していたものなので、早急にサンプルを単離して解析を行うことで使用する。その後については当初予定していた、同定したタンパク質の機能解析を中心に進めていく。
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