研究課題/領域番号 |
25860067
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
宮田 佳樹 帝京大学, 薬学部, 講師 (20433881)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / ポリメトキシフラボン / マトリックスメタロプロテアーゼ / 小胞体ストレス / 網膜移行性 |
研究概要 |
本研究課題では、糖尿病網膜症に対する内科的治療に適応可能な化合物の探索研究を新たに構築したポリメトキシフラボン類の化合物ライブラリーを用いて行っている。 (1)鶏胚硝子体を用いた薬物スクリーニング系の樹立:本研究では、ヒト硝子体と組成成分の点で類似性が高く摘出後の形態保持性に優れている鶏胚硝子体を利用して血管内皮細胞株(b.END3)あるいはミュラー細胞株(MIO-M1)接着後の硝子体収縮動態について硝子体重量を指標として定量的に評価し得る実験モデルを樹立した。本実験系は細胞接着後の硝子体収縮阻害能を指標とした薬物スクリーニングに応用できると考えている。 (2)糖尿病網膜症の病態解析:ミュラー細胞の細胞死の新たなメカニズムについて、細胞内での異常タンパク質の蓄積により生じる小胞体ストレスがミュラー細胞の細胞死に関与していることを明らかにした。MIO-M1細胞に小胞体ストレス誘導試薬であるツニカマイシンやタプシガルギンを処理した結果、アポトーシスの指標であるDNA断片化および活性型Caspase-3のフラグメントが検出された。また、このアポトーシス死にアポトーシス促進因子であるCHOPおよびJNKの関与が示唆された。 (3)MMP阻害能を指標とするポリメトキシフラボン類の抗網膜症効果の解析:本研究では、網膜MMP産生細胞の一つであるミュラー細胞におけるポリメトキシフラボン類のMMP産生に対する効果について検討した。その結果、ノビレチンがMIO-M1細胞におけるホルボールエステル誘導性proMMP-9産生に対して濃度依存的な抑制効果を示すことが明らかとなった。また、新規合成したフラボノイド化合物の中にノビレチンを凌ぐ強力なMMP産生抑制効果を有する化合物を見出し、フラボン骨格B環に存在するメトキシ基(-OMe)を脱メチル化して水酸基(-OH)とすることで抑制効果が増強することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硝子体動態を定量的に評価し得る薬物スクリーニング系を初年度に樹立できたことは大きい。また、病態解析も順調に進んでおり、小胞体ストレスのミュラー細胞死への関与を細胞レベルではあるが明らかにすることができた。また、新たに構築したポリメトキシフラボン類の化合物ライブラリーを用いた in vitro解析によって網膜症予防の重要因子と位置づけているMMPの産生抑制効果に関わるフラボン類の構造特性が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ポリメトキシフラボン類の網膜移行性についてRetinal Uptake Index法(RUI法)によって解析する。また、小胞体ストレス誘導性網膜障害モデルにおけるポリメトキシフラボン類の有効性を組織学的に検証する予定である。ポリメトキシフラボン類のMMP産生抑制効果に関する構造活性相関研究を引き続き遂行していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験のための設備備品費の主要な支出が次年度となったため。 経費の主要な用途は研究計画の遂行に伴う消耗品費と設備備品費である。
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