1. 小胞体ストレス誘導性アポトーシスに対するフラボノイドの効果 糖尿病網膜症の病態では、持続する高血糖状態が網膜特異的なグリア細胞であるミュラー細胞に対してアポトーシスに起因する細胞死を誘導することが分かっている。これまでに申請者は、ミュラー細胞のアポトーシス死に変性蛋白質の小胞体蓄積、小胞体ストレスが関与することを明らかにした。この小胞体ストレス誘導性アポトーシスに対するフラボノイドの影響を検討した結果、天然由来フラボノイド化合物のノビレチンに抗アポトーシス効果を見出した。また、新規合成したノビレチン誘導体との比較によって、ノビレチンの抗アポトーシス効果に関わる構造特性を明らかにした。
2. 新規マトリックスメタロプロテアーゼ阻害薬の探索研究 ミュラー細胞が産生する蛋白質分解酵素マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、血液網膜関門の破綻や網膜と硝子体腔を隔てる内境界膜の分解に関わり、糖尿病網膜症の病態に関与している。ミュラー細胞を標的としたMMP阻害薬は新たな抗網膜症薬になり得ると考えられる。ミュラー細胞由来のMMP産生を抑制し得る化合物を得るため、申請者らが構築したフラボノイド化合物ライブラリーを駆使してスクリーニングした結果、ノビレチンとその誘導体にMMP産生抑制効果を見出した。また、MMP産生抑制効果の増強に関わる構造特性を明らかにした。
|