研究課題
厚生労働省が定める特定疾患治療研究事業対象疾患(難病)に指定されている肺高血圧症は、肺血管の障害によって肺血管抵抗が上昇し、持続的に肺動脈圧が上昇する致死性の疾患である。我々は、肺動脈平滑筋に発現して細胞外のCa2+濃度を感知するCa2+感受性受容体(CaSR)の発現増加および機能増強が、肺高血圧症の病態機構に関与していることを明らかにした。本申請課題では、肺高血圧症で機能亢進したCaSRと機能連関するCa2+流入経路を検索した。対照群(normal)および特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)患者由来の肺動脈平滑筋細胞(PASMCs)を用いて、Ca2+イメージングや電流解析などの機能解析を行った。その結果、IPAH-PASMCsで観察されるCaSRを介した細胞外Ca2+添加によって惹起される細胞内Ca2+濃度([Ca2+]cyt)上昇の持続相は、非選択的陽イオンチャネル阻害薬であるLa3+により抑制された。受容体作動性Ca2+チャネルの活性化薬であるOAGは、IPAH-PASMCsの[Ca2+]cytを増加させた。IPAH-PASMCsのTRPC6発現は、normal-PASMCsよりも高いことが分かった。TRPC6チャネルのsiRNAノックダウンは、CaSRを介した[Ca2+]cyt上昇を顕著に抑制した。一方で、normal-PASMCsにCaSRとTRPC6チャネルを共発現させると、細胞外Ca2+誘発性[Ca2+]cyt増加を再現できた。IPAH-PASMCsにおけるTRPC6チャネル電流は、CaSRの活性化によって惹起された。IPAH-PASMCsにおける細胞外Ca2+誘発性[Ca2+]cyt上昇は、CaSRとTRPC6チャネルの機能的連関によることが示唆された。この機構が、IPAH患者の過剰なCa2+流入や細胞増殖に関与している可能性が考えられる。
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Am J Respir Cell Mol Biol
巻: in press ページ: in press
10.1165/rcmb.2014-0235OC
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http://tdb.kinjo-u.ac.jp/search/index.php/search/teacher_info?teacherid=12847