研究実績の概要 |
臨床的に抗がん剤が効きにくい腫瘍である腎臓癌を研究対象とし、内因性抗がん物質である15-deoxy-delta-12,14-prostaglandin J2 (15d-PGJ2)の抗腫瘍効果を測定し、その作用メカニズムを解析することで、難治癌である腎臓癌の新規治療法の開発を目指す。 15d-PGJ2は各種腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を有することが報告されているが、その作用は15d-PGJ2の受容体であるPPARgammaを介した経路以外の作用が存在することも報告されている。申請者らは新規の15d-PGJ2の作用経路として、細胞膜上の未知の15d-PGJ2の受容体あるいはトランスポーターが存在する可能性があることを報告している。15d-PGJ2の新規作用機序を探る研究として、15d-PGJ2が結合するタンパク質を同定し、これらのタンパク質が抗悪性腫瘍効果にどのような寄与があるかを明らかにする目的で検討を行った。腎臓癌細胞株において2次元電気泳動法ならびに質量分析法を用いたプロテオーム解析を行い、15d-PGJ2と結合するタンパク質を数種類同定した。同定したタンパク質について、実際に細胞膜上に発現しているかどうか、特異的抗体を用いた蛍光免疫染色法によって確認を行った。さらに同定したタンパク質の特異的抗体を腎臓癌細胞株に適用し、細胞増殖に影響を与えるかどうか、MTT assayによる検討を行った。しかしながら、腎臓癌細胞の増殖を抑制する抗体は見出せなかった。 今後も、15d-PGJ2と結合するタンパク質について、さらなる種類のタンパク質を同定し、新しい腎臓癌治療薬の標的となるタンパク質および作用メカニズムの解明を目指す。
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