研究課題/領域番号 |
25860076
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
山村 良美 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (30464027)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 二次代謝 / チトクロームP450 / ジテルペン / 物質生産 |
研究概要 |
本研究の目的は「植物が産生する多彩な四環性ジテルペン骨格を構築するための重要な因子である一連のチトクロームP450 (P450) 及び環化酵素遺伝子を単離し、同じカテゴリーに分類されながらも化学構造上異なる基本骨格を持つ天然物が、一つの細胞の中でどのように作り分けられるかを分子生物学的レベルで理解すること」である。この目的のために、ジテルペン生合成酵素をコードする一連の遺伝子群がジャスモン酸 (JA) 等の外部刺激に対して大きく異なる応答性を示すことを利用し、それぞれのP450遺伝子がどのジテルペン骨格の天然物生合成に関与するホモログであるかを解明すること試みた。 我々が最近見出した67個のP450フラグメントのうち、高発現していた14種について、MJ処理による発現誘導の再現性をRT-PCRで確認したところ、7種のcDNAクローンでエリシター処理による発現増加が観察できた。このうち、機能未解明の2種 (7-15、8-5) について、全長cDNAクローン (SdCYP5、SdCYP6) を得た。SdCYP5およびSdCYP6の推定アミノ酸配列は、様々な高等植物の二次代謝に関与しているCYP71Dファミリーと高い相同性を示すことが明らかになった。さらに、SdCYP5のアイソフォームSdCYP7とSdCYP8の単離にも成功した。次に、今回単離した単離したSdCYPの遺伝子発現とSDB生合成の関係について解析をした。その結果、SdCYP5、SdCYP8ではSDB生産が最も高い若い葉において発現増加が観察された。一方、スコパリアでの酵母エキス (YE) によるエリシター誘導性があるかを解析したところ、SDBの急速な増加が見られた。このことから、スコパリアのSDB生合成には、YEによるエリシター誘導性が存在することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、SDB生合成経路の制御機構を解明することを目的としてP450分子種に着目し、エリシター誘導性のP450クローニングとその解析を行った。エリシター誘導性のP450候補遺伝子として単離したSdCYP5、SdCYP6、SdCYP7およびSdCYP8は、CYP71ファミリーに分類された。これらのクローンのうち、SdCYP5およびSdCYP8はスコパリア葉におけるSDB生合成活性と密接な関係を有していた。 さらに、ジテルペン環化酵素のクローニングを行ったところ、ent-kaurene synthaseやent-kaurene oxidase (CYP701Aファミリーに属するP450) をコードする遺伝子の単離にも成功した。 以上の結果から、本研究の目的は順調に達成しており、今後も生合成遺伝子のクローニングおよびエリシター添加による変動の解析はエリシター制御機構の解明には必要不可欠であり、総合的な解析の基礎となる知見である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の遺伝子からのアプローチに引き続き、得られたP450や環化酵素を微生物で高発現させた組み換えタンパク質を用いることにより、触媒反応機構を詳細に調べる。 ①組換えP450の基質特異性 前年度にクローニングしたS. dulcisのP450とP450 reductase遺伝子(当研究室ですでに単離)のORF部分をそれぞれ大腸菌発現ベクターに組み込み、発現用大腸菌株に導入する。両酵素遺伝子を共発現させ、対応するタンパク質の蓄積を確認する。その後、酵素タンパクを精製して基質と反応させ、生成物をGC-MSで解析する。反応産物のピークが観察された場合、酵素量や反応時間依存的な挙動も観察する。また、反応経路の中間体以外にも類似構造をもつ化合物等を用いて基質特異性を調べる。また、クローニングの際に同時に単離できるホモログの中でのアミノ酸配列の違いがP450分子種の基質認識におよぼす影響(基質親和性など)も観察する。 ②組換え環化酵素タンパク質の酵素活性 まず、単離した環化酵素クローンのORF部分を大腸菌発現ベクターに組み込み、発現用大腸菌株に導入する。発現を誘導した大腸菌から可溶性画分を調製し、タンパク質発現を確認した後、必要であればカラムを用いて精製する。基質と組換えタンパク質とを反応させ、反応産物をGC-MSで解析する。反応産物のピーク (GC-MS用検索ライブラリーで特定可能) が観察された場合、酵素量や反応時間依存的な挙動も観察する。基質以外にも類似構造をもつ化合物等を用いて基質特異性を調べる。次いで、モチーフ欠損、アミノ酸置換にも着手し、同様に基質と反応させ、酵素活性を検出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額が生じてしまったが、本計画は順調に進んでおり今年度の計画遂行には影響はない。 残額は物品費(消耗品等)として使用する予定である。
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