研究課題/領域番号 |
25860080
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石内 勘一郎 日本大学, 薬学部, 助教 (70608140)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | huperzine A / アルツハイマー病 / 植物内生糸状菌 / 生合成遺伝子 / Lycopodium alkaloid / serralongamine B / マクロファージ泡沫化阻害活性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、遺伝子工学的手法を用いることで、アルハイマー病治療候補薬であるhuperzine A (HupA)の生物合成による新規大量供給法を確立することである。HupAは微量アルカロイド成分であり、医薬品として市場に供給可能な生産システムは確立されておらず新たな供給法の確立が急務とされている。本研究では、HupAを生産する植物内生糸状菌を獲得し、簡便な遺伝子操作を可能とするシステムを確立した後、遺伝子破壊実験によりHupAの生合成遺伝子を特定する。さらに明らかとなった生合成遺伝子をすでに確立された酵母を宿主とした異種発現システムに適用することで、HupAの大量生物合成システムの確立を目指す。 平成26年度は、まず、前年度にオニトウゲシバLycopodium serratum var. longipetiolatumより獲得したHupA生産内生糸状菌 (Phoma sp.)についてHupA安定生産培養条件を検討した。またオニトウゲシバLycopodium serratum var. longipetiolatumのメタノール抽出物について、カラムクロマトグラフィー等の分離技術を駆使して新規リコポジウムアルカロイドserralongamine Bを単離しその化学構造をNMR等の分光学的手法を用いて一部相対配置まで決定することに成功した。さらにserralongamine Bがアテローム性動脈硬化症の初期病変であるマクロファージの泡沫化阻害活性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、HupA生産糸状菌のゲノム配列の解読ならびにHupA生合成遺伝子の特定を目標としていたが、本年度はすべての計画を達成することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずHupA生産株のプロトプラスト変異誘導によるHupA安定生産株の取得を目指す。またすでに得られている他の内生糸状菌について遺伝子解析による潜在的HupA生産株の探索を進める。続いて糸状菌Chaetomium globosumにおいてすでに確立された形質転換法を参考として得られるHupA生産糸状菌の形質転換システムを確立する。形質転換はプロトプラスト-PEG法で行うこととし、使用可能な選択マーカーの条件等を検討する。続いて高頻度な相同組換えを可能とするためにligD遺伝子破壊株の取得を行う。さらに栄養要求性マーカーであるpyrG遺伝子を破壊し、形質転換のマーカーリサイクルを容易に行えるようにする。得られるHupA生産糸状菌のligD/pyrG破壊株を用いて、予想されるHupA生合成遺伝子を順次破壊し、HupAの生合成に必須な遺伝子を特定する。また遺伝子破壊実験によって得られるHupA生合成中間体の構造をNMR等の分光学的手法により明らかにすることで、HupAの生合成経路の詳細を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の計画では、目標であった内生糸状菌のHupA生合成遺伝子の特定まで至らなかった。これに伴い、遺伝子実験の消耗品費用に残余が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、消耗品費について遺伝子工学関連試薬に対して300千円、酵素に対して600千円、有機化学関連試薬に対して200千円、ガラス器具に対して100 千円の支出を予定している。
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