無菌植物体の確立に成功した4種のヒガンバナ科植物(Galanthus elwesii、Habranthus andersonii、Narcissus bulbocodium、Leucojum aestivum)の地上部、小球、根及びN. bulbocodiumのカルスについて、凍結乾燥後、メタノール抽出し、高い表面極性を持つアダマンチル基を充填剤表面に導入したカラムを用いてLCMS-IT-TOF分析を行うことにより、ヒガンバナアルカロイド生合成仮想中間体の一斉分析系の確立を行った。分析により検出された質量イオンピークについて、ヒガンバナアルカロイドの精密質量に基づいてスクリーニングを行った結果、GalanthamineはL. aestivum及びN. bulbocodiumの地上部と小球、G. elwesiiの根に多く蓄積していることが示された。Lycorineはいずれの植物においても多く蓄積していることが示されたが、N. bulbocodiumでは他の3種と比べてLycorineの蓄積量が少ない一方で、Lycorineと骨格が僅かに異なるNarcissidineと推測されるピークのイオン強度が非常に大きいことが明らかになった。N. bulbocodiumのカルスでは、ヒガンバナアルカロイド生合成仮想中間体に相当するピークは検出されなかった。これらの結果から、ヒガンバナ科植物には、ヒガンバナアルカロイドを作り分ける生合成制御機構が存在することが示唆された。 さらに、4種のヒガンバナ科無菌植物を材料として、次世代シークエンサーを用いた発現遺伝子の網羅的解析を行うことにより、各植物種及び部位における発現遺伝子の種類と強度を明らかにした。今後、遺伝子発現とヒガンバナアルカロイド蓄積の間の相関を明らかにし、ヒガンバナアルカロイド生合成制御機構の解明へと発展させていく予定である。
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