研究課題/領域番号 |
25860082
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
岩月 正人 北里大学, その他の研究科, 講師 (70353464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗マラリア原虫活性物質 / 抗生物質 / Glyoxalase I |
研究概要 |
抗マラリア原虫活性およびマラリア解毒酵素glyoxalase I阻害活性を指標に微生物培養液のスクリーニングを行い活性物質の精製・構造決定を実施した。 (1)微生物培養液からのIn vitro抗マラリア原虫活性物質の探索:北里大学北里生命科学研究所微生物機能研究室および微生物資源センターより供給された微生物培養液3,004サンプルについてスクリーニングを実施した。その結果、抗マラリア原虫活性とMRC-5細胞に対する細胞毒性の選択毒性比が20倍以上の9サンプルを選択した。選択したサンプルについてのLC-UV-MS分析の結果、糸状菌培養液4サンプルより本系で頻繁に選択させるleucinostatin類が検出された。さらに放線菌培養液2サンプルについても検討を進めた結果、活性物質をdianemycin類と同定した。本物質の抗マラリア活性は既知である(J. Antibiot., 54 658-663, 2001)。 (2)Puberulic acidおよびその合成誘導体のマラリア解毒酵素glyoxalase I阻害活性の評価:所属センターで糸状菌培養液より発見した抗マラリア原虫活性を示すトロポロン系化合物puberulic acidにおよびその合成誘導体(北里生命科学研究所生物有機化学研究室で調製)についてマラリア解毒酵素glyoxalase I 阻害活性の評価を行った。トロポロン系化合物がglyoxalase I阻害活性のを示すことが報告されていたことから本化合物の標的をglyoxalase Iであると推定し本実験を実施したがこれら化合物のglyoxalase I 阻害活性はいずれも抗マラリア活性を大きく下回った。従ってこれら化合物の標的はglyoxalase I ではないと結論づけた(本結果はJ. Antibiot.に投稿済み。現在in press)。 (3)微生物培養液からのマラリア解毒酵素glyoxalase I阻害活性物質の探索:既に確立済みの評価系により所属センターの保有する化合物ライブラリーをスクリーニングしたが強い阻害活性を示す物質は現在のところ見出せていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」でも述べたが本研究の柱である3つのテーマについて下記に示すようにおおむね順調に進展できたと考えている。 (1)微生物培養液からのIn vitro抗マラリア原虫活性物質の探索:申請書で計画した通り放線菌および糸状菌培養液(3,004サンプル)についてスクリーニングを実施した。その結果、選択した9サンプルについて検討し、活性物質として既知物質ではあるが選択したleucinostatin類およびdianemycin類を見出した。また糸状菌3株(同一物質を生産と推定)についてはLC-UV-MS分析の結果より新規物質の可能性が高いと考えており鋭意検討中である。 (2)Puberulic acidおよびその合成誘導体のマラリア解毒酵素glyoxalase I阻害活性の評価:申請書で計画した通りpuberulic acidにおよびその合成誘導体についてマラリア解毒酵素glyoxalase I 阻害活性の評価を行い、これら化合物の標的がglyoxalase I ではないと結論づけた。本結果はJ. Antibiot.に投稿しており現在in pressである。 (3)微生物培養液からのマラリア解毒酵素glyoxalase I阻害活性物質の探索:申請書でも計画した通り所属センターの保有する化合物ライブラリーをスクリーニングを実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の柱である3つのテーマについての「今後の研究の推進方策」は下記に示す通りである。 (1)微生物培養液からのIn vitro抗マラリア原虫活性物質の探索:申請書で計画した通り今年度も放線菌および糸状菌培養液(および外部共同研究機関より提供される化合物)についてスクリーニングを継続し、選択された培養液サンプルについて活性物質の取得を検討する。また前年度選択された糸状菌3株(同一物質を生産と推定)についてはLC-UV-MS分析の結果より新規物質の可能性が高いと考えており今年度も引き続き活性物質の精製を検討する。さらにin vitro抗マラリア原虫活性が良好である化合物が得られた場合にはin vivo抗マラリア原虫活性の評価についても実施する。 (2)Puberulic acidおよびその合成誘導体のマラリア解毒酵素glyoxalase I阻害活性の評価:既に前年度に検討を行い、これら化合物の標的がglyoxalase I ではないと結論づけたことから今年度は(3)に注力する。 (3)微生物培養液からのマラリア解毒酵素glyoxalase I阻害活性物質の探索:申請書で計画した通り今年度は北里大学北里生命科学研究所微生物機能研究室および微生物資源センターより供給される放線菌および糸状菌培養液についてスクリーニングを実施する。また選択された培養液サンプルについては活性物質の精製を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は主に学会出張用に計上した「旅費」10万円および主に論文出版用に計上した「その他」10万円のついて使用の機会がなかったため次年度使用額(B-A)が約34万円となった。 今年度は本申請課題で得られた成果を学会発表するために出張用に計上した「旅費」を使用する予定である。また、前年度末に既に専門誌(J. Antibiot.)において審査・受理された論文の掲載に拘る経費を「その他」より支出する予定である。更に前年度同様に(1)抗マラリア原虫活性および(2)マラリア解毒酵素glyoxalase I阻害活性を指標とした微生物培養液のスクリーニングおよび選択株培養液からの活性物質の精製、構造決定を実施するために物品費を使用する。この物品費には(1)もしくは(2)で見出した活性物質について動物レベルでの毒性および治療効果を検討する場合にも使用する予定である。
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