研究課題
漢方薬は、漢方医学に独特の診断基準「証」に基づいて処方される。本研究は、その漢方処方システム理論の包括的な理解を目指して進められた。特に、処方システムの基盤となる漢方方剤-「証」-薬効化学成分の相関関係に着目した研究を行った。H27年度は、主に以下の研究を遂行した。(1)漢方方剤(構成生薬の量・比)-「証」-薬効化学成分(メタボローム)の相関関係について総括するため、本年度までに得られたデータの多変量解析を、Principal Component Analysis(PCA)とPartial Least Squares Projection to Latent Structures(PLS)回帰分析により行った。なお、「証」については虚/実(体質)に焦点を当てた。その結果、漢方方剤が処方される「証」と、構成生薬の量・比との相関は、数理モデルによって表され得ることが示唆された。また、「証」とメタボローム(方剤を構成する生薬に含有されている化学成分の総体)との相関も、同様に表すことができた。そして、漢方方剤の構成生薬量・比やメタボロームの側から、その方剤の適用「証」が予測され得ることも確かめられた。なお、これらの解析結果は二次元または三次元のグラフによって可視化することが可能である。(2)漢方方剤の構成生薬量・比と、虚/実、気・血・水(生体の生理的因子)などの「証」について、研究期間を通して構築してきたデータベースの情報を追加・更新した。このデータベースに集約された情報は、上記(1)に使用した。(3)漢方方剤のメタボローム分析は、これまで主としてMS(質量分析)により行ってきたが、加えてNMR(核磁気共鳴)分析を一部進めた。これによって、漢方方剤の新しい化学フィンガープリンティングを確立するための予備的な知見を得ることができた。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Journal of Natural Medicines
巻: 70 ページ: 107-114
10.1007/s11418-015-0946-0