Resolvin E2 (RvE2) の安定等価体を創製するために、まずはRvE2の合成を行い、その合成経路を確立した。続いて、研究計画通りに、RvE2のC12-C13二重結合をシクロプロパン環に置換したフラグメントを調製した。このものを用いて、RvE2の合成と同様の方法でα-およびβ-CP-RvE2を合成した。 次に、合成したRvE2とα-およびβ-CP-RvE2の酸化安定性を評価した。それぞれの化合物を空気中およびアルゴン中で放置し化合物の残存量を測定したところ、RvE2の半減期に対してα-およびβ-CP-RvE2の半減期は約40倍長くなることが分かった。つまり、C12-C13二重結合がRvE2の不安定性に関わっており、シクロプロパン環がその不安定性の改善に効果的であることが明らかとなった。 最後に、合成したRvE2とα-およびβ-CP-RvE2の生物活性を評価した。炎症モデルマウスを用いてそれぞれの化合物を投与後、腹腔滲出細胞数を測定したところ、RvE2とα-およびβ-CP-RvE2は同じように強力に抗炎症作用を示すことが分かった。つまり、RvE2のC12-C13二重結合をシクロプロパン環で置換してもRvE2の生物活性は維持されることが明らかとなった。 以上のことから、本研究によってRvE2の安定等価体の創製に成功した。これまでにレゾルビン類の安定等価体は報告例がなく、本研究が初めてである。今後、様々な薬のリード化合物の安定供給が可能となるとともに、生物学的・薬理学的研究の発展にも大きく貢献できると期待される。
|