研究課題/領域番号 |
25860090
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
伊藤 俊将 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (80536110)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 脂肪酸合成 / PPARγ / タンパク質NMR / X-線結晶構造解析 / インスリン抵抗性改善作用 |
研究概要 |
PPARγは2型糖尿病治療薬の標的分子として知られている。近年、PPARγリガンドによるインスリン抵抗性改善作用とPPARγのリガンドによるSer245のリン酸化阻害が関連付けられた。本研究はPPARγのリガンドがPPARγに与える”力”がどのような経路を経てSer245に伝わりリン酸化を阻害するかを解明するための研究課題である。 当該年度は有機合成、X-線結晶構造解析を行い、タンパク質NMR、本研究課題を実施した。有機合成実験ではPPARγのリガンドの合成を行った。その結果、特徴のあるリガンド(フルアゴニスト、脂肪酸型アゴニスト、共有結合型アゴニスト)を合成し、実験に必要な量を得た。 また、既にタンパク質NMRの帰属に用いられているフルアゴニストを入手し、PPARγの共結晶構造解析を行った。その結果PPARγのフルアゴニストのカルボン酸は予想通り活性に重要なヘリックス12と水素結合していた。さらに、アゴニスト中のケトン基も、ヘリックス12と水素結合を形成していた。これにより、強いアゴニスト活性が出たものと考察した。また、NMRはアポの帰属を行うため、フルアゴニストによる滴下実験を行い、ピークの軌跡を追うことで、解析に資する帰属を終えた。いくつかのアミノ酸残基はリガンドの影響を強く受けていることを見出した。フルアゴニストによって、ヘリックス12上のアミノ酸残基は予想通り大きくシフトしていることも確認することができた。また、2つのアミノ酸残基の点変異の作成を行った。以上の内容は、2つの国際学会と国内の学会、シンポジウムで発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、リガンドの合成、タンパク質NMRのアポ型の帰属、点変異実験、リン酸化阻害実験を行なう計画であった。上述のとおり達成できた実験のうちリガンドの合成は、PPARサブタイプの共有結合型リガンドが副次的に見出された。研究成果をまとめる上で期待以上の成果と考えられる。一方、リン酸化阻害実験はイタリアのグループが担当しており、完了には至っておらず現在も実験を継続しているところである。X-線結晶構造解析とタンパク質NMR実験はほぼ計画通りに進行している。変異実験は、変異体の作成を終えたところである。したがって、期待以上の進展もあるが遅れが出ている実験もある。遅れがでている実験は平行して行うことができるため、律速段階にはならないと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、点変異の発現、精製条件を検討後、NMR実験を行い、リガンド結合による”力”が伝播するアミノ酸残基を特定する。CDスペクトルを利用したグアニジン変性実験により、変異体と野生型の安定性を比較する。また、変異体と野生型の溶液散乱実験を実施し、PPARγ単量体の時の構造変化であるのか、単にリン酸化を担うCDK5との複合体になった時に初めて構造変化を起こすのかを推定する。X-線結晶構造、NMRシフト、変異実験から得られた情報をin silico上で統合し、リガンドからSer245までの力の伝播経路を特定する。最後に、以上の実験結果の集大成として次の3つの条件を満たした化合物を設計し合成する。①Ser245リン酸化阻害作用を有する。②アゴニスト作用を示さない。③PPARγと強力に結合する。
|