アルコール依存症は世界的に問題になっている病気で、その治療の基本はアルコール摂取を止める「断酒」である。しかし、アルコール依存症患者がアルコール摂取を急激に止めると不安やけいれん、うつなどの離脱症状が生じる。患者はこれらの不快な症状を紛らわせるために飲酒をしてしまい、これがアルコール依存症治療の問題になる。アルコール依存症の離脱症状の発現メカニズムの解析を目的に、動物実験によるアルコールの離脱症状モデルの確立を行い、離脱症状発症とGABA(A)受容体の関係を解析した。具体的にはマウスにエタノール2 g/kgを1日1回11日間腹腔内投与してアルコールの離脱症状モデルを作製し、離脱症状の不安様症状やうつ様症状を各種行動薬理試験により評価した。離脱症状モデル動物にGABA(A)受容体アゴニストを投与し、離脱症状発現に及ぼす影響を解析した。 最終年度はアルコールの離脱症状モデルマウスにおいて、11日間のエタノール投与直後に比べて1週間後にうつ様症状が現れやすくなることをTail Suspension Testで見出し、Novelty Suppressed Feeding Testでもアルコール離脱症状のうつ様症状を評価できた。また、アルコール離脱時のマウスと正常マウスに、α1サブユニットを含むGABA(A)受容体のアゴニストであるCL218872を投与し、明暗箱試験で不安様症状を解析した。CL218872を投与されたマウスの明暗箱内での移動回数に増加傾向が見られ、α1サブユニットを含むGABA(A)受容体が不安様症状発症に関係する可能性が示唆された。 今後はアルコールの離脱時の不安様症状発現へのGABA(A)受容体の関与について期間内に行った実験の再現性の確認を行い、うつ様症状発現へのGABA(A)受容体の関係を検討した上でGABA(A)受容体の発現と離脱症状の関係を調べたい。
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