研究課題
本研究では、H. heilmannii感染惹起性の胃粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)リンパ腫の病態悪性化因子の同定、および治療法の探索を主たる目的とし、本年度はH. heilmannii長期感染マウスで活性化が認められるCD86シグナルの阻害物質CD152-Ig抗原の作成および本物質の病態改善効果の検討を行った。野生型CD152-IgおよびCD86に対する親和性を高めた変異型CD152-Igの発現ベクターをExpi293細胞にトランスフェクション後、回転培養にて蛋白質の大量発現を行った。細胞培養液液を回収後、組換えProtein Aをリガンドに使用したMabSelect SuReを用いて抗原精製を行った。得られた抗原物質をPD-10カラムにて脱塩後、蛋白定量を行った後に動物実験に使用した。C57BL/6マウスに対し、H. heilmannii感染時より変異型CD152-Igを10 mg/Kgで週2回、4、8および12週間腹腔内投与したのちに、感染マウスの胃粘膜病態を解析した。免疫組織学的解析の結果、変異型CD152-Ig抗原12週投与マウスにおいて、一定の病態改善効果が認められた。また同時に、胃MALTリンパ腫構成細胞であるB細胞のマーカー遺伝子B220のmRNA発現減少も認められた。さらに、H. heilmannii慢性感染マウス(感染半年)に対し、野生型および変異型CD152-Igを8週間腹腔内投与した結果、変異型CD152-Ig抗原投与マウスにおいてのみ、組織化学的解析での病態改善効果、および胃粘膜でのB220のmRNA発現減少が認められた。本研究によりH. heilmannii感染胃粘膜で活性化されるCD86シグナルが胃MALTリンパ腫病態形成に重要な役割を果たす事が明らかとなった。さらに、本シグナル阻害物質である変異型CD152-Igが、本病態に対する治療効果を有する事が明らかとなった。
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