研究実績の概要 |
本研究は危険ドラッグの中でも乱用が問題視されている「覚せい剤類似化合物」の構造活性相関の解明に繋がる情報収集することを目的としている。平成27年度は当初の計画通り、覚せい剤類似化合物を投与したマウス脳内におけるプロテオーム解析を実施した。その結果、薬物依存性が確認されている、メタンフェタミン、4-メトキシ-メタンフェタミン、および4-メトキシ-アンフェタミンを1日おきに1週間連続投与したマウス脳内では、生理食塩水投与群と比較して13種類の蛋白質が共通して発現減少していた。各蛋白質は依存性薬物中毒の臨床症状である、多幸感、高熱、神経脱落などを反映していた。さらに、これらの蛋白質の中でも変動の大きい4種(GPR75, CoQ9 LXN, TXNL1)に注目し、1日おきに化合物を1週間連続投与した時の各時間(6時間、1日、7日)における蛋白質発現変動をウエスタンブロット法で検討した。その結果、各蛋白質でその発現プロファイルは異なるものの、おおむね投与開始から1日後にはすべての蛋白質が発現減少していることが明らかとなった。 2年間の研究期間において、本研究では覚せい剤類似化合物の①細胞毒性、②神経分化毒性、③カテコールアミン放出への影響、④脳内プロテオームに及ぼす影響を明らかにした。覚せい剤類似化合物はその全てが覚せい剤と同等もしくはそれ以上の毒性・生理作用を示す上に、脳内で変動する蛋白質も極めて類似していた。従って、危険ドラッグを規制する上で基礎骨格を基準にした現在の包括指定は妥当であると考えられる。また、今回プロテオーム解析で見出した蛋白質は薬物依存性バイオマーカーとして有用である可能性がある。今後、これらを活用した迅速な薬物依存性評価法の確立を目指したい。
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