ナトリウム(Na)チャネル遮断薬による不整脈治療では、一般的に有効血中濃度とされている濃度より低濃度でも効果のある患者や濃度範囲内でも効果のない患者が存在する。そこで、本研究では、心筋Naチャネルの発現量や機能に影響する遺伝子多型に着目することで、Naチャネル遮断薬の臨床効果における個人差の原因を明らかにすることを目的とした。 β1アドレナリン受容体の遺伝子変異がNaチャネル遮断薬フレカイニドの臨床効果におよぼす影響について検討したところ、β1アドレナリン受容体のArg389gly変異により臨床効果が減弱することが確認された。さらに、Arg389gly変異による臨床効果の減弱は、すべての患者にあらわれるわけではなく、β遮断薬を服用している患者で顕著にあらわれることを明らかにした。また、他のNaチャネル遮断薬のプロパフェノンについてもフレカイニドと同様に検討を進め、血中濃度を用いて臨床効果や副作用を評価するために適切な採血時間は、プロパフェノンの最高血中濃度到達時間の前後であることを確認した。 Naチャネルのプロモーター領域の遺伝子変異は、Naチャネル遮断薬の有効血中濃度範囲を低濃度へのシフトすることが明らかになっている。よって、Naチャネルのプロモーター領域の遺伝子変異と本研究で明らかになったArg389gly変異の影響を考慮することで、Naチャネル遮断薬による不整脈治療の成功率を高めることができる可能性がある。
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