研究課題
若手研究(B)
メタンフェタミン連続投与したマウスおよびコントロールマウス脳部位ごとのゲノムDNA を抽出し、各遺伝子におけるメチル化の状態についてエピジェネティックな解析を試みた。さらに、同動物より血液を回収した後、SHATI、PICCOLO、TMEM168の血中におけるメチル化の状態についても検討し、ゲノムのメチル化が、精神疾患においてのバイオマーカーとなり得るかどうかを検討した。メタンフェタミン繰り返し投与により、海馬、側坐核、前頭前皮質において上記の遺伝子の上昇がリアルタイムPCRにより確認された。また血中メチル化状態に変化がある可能性が認められたため、その変化が脳部位ごとのメチル化状態をも反映するかどうか、脳部位ごとのメチル化解析を行い、血中との相関性について検討した。TMEM168については、目的とした脳部位においてはほとんどメチル化がおこっておらず、メタンフェタミン連投マウスとコントロールマウスにおいて変化は確認されなかった。Shatiのメチル化について側坐核においてはメタンフェタミン群ではコントロール群と比較して、Shati転写開始点上流であるCpGアイランド1のDNAメチル化率が減少しており、特定のCpGユニットで有意な減少が確認された。また血中のShatiゲノムのメチル化についても確認したところ側坐核と同様に減少が確認され、興味深いことに側坐核と同様のCpGユニットで有意な減少の確認できた。このことより、血中のメチル化の測定が、脳内のメチル化を反映する可能性が考えられる。さらなる解析が必要であるものの血中DNAメチル化解析による統合失調症診断への応用の可能性が示唆される。さらに、富山大学精神科との共同研究により精神科に通院中の統合失調症患者と健常者においてマウスで変化が認められたShatiのメチル化の変化の検討の準備を開始した。
2: おおむね順調に進展している
研究の順番に差異はあるもののほぼ計画どおりに進行している。なかでもマウスの脳内の特定の部位と血中のメチル化の相関性が明らかとなったのは大きな前進であり、その結果をもとに臨床研究に着手することができたのは大いなる前進だと思われる。
目的とする遺伝子に対する特異的な抗体は市販されておらず、また作成もあまりうまくいっておらず、血中でのタンパク質解析は見直しの必要が考えられる。またShatiのプロモーター解析について着手し有意な結果を得られているが、その他の遺伝子についても解析を行いたい。臨床研究については本学倫理委員会の承認が得られたので至急開始する予定である。
本年度は新しくプロモーターアッセイの系を立ち上げる予定であったがそれがかなわず次年度使用額が生じた。また倫理委員会の承認がなかなかとおらず臨床研究の開始も少し遅れたのが原因かと考える。また海外学会で報告する予定であったものが都合により渡航できなかったのも原因のひとつと考える。次年度はプロモーターアッセイの立ち上げ等に本年度の繰越金を使用する予定である。また臨床研究のシークエンス解析にも繰越金と来年度予算で充足する予定である。また本年度はカナダで行われる国際学会に参加発表予定である。
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