研究課題
本研究の目的は、血液中オキシトシン濃度と唾液中オキシトシン濃度を定型発達者において比較し、簡易検査法としての唾液中オキシトシン濃度測定の有用性を検討することである。自閉スペクトラム症(ASD)においてオキシトシンの分泌異常が指摘されており、近年、ASDの治療薬としての応用を模索する研究が盛んになっているため、測定方法の簡便化には大きな意義があり、血液検査による侵襲性やASDにおける感覚過敏を考慮すると、唾液による測定方法はより簡便で有用と考えられる。定型発達者の男女73人(35.4+/-12.4歳)において、血漿検体5cc、唾液検体2ccを採取し、凍結保存後、酵素免疫測定法により両検体のオキシトシン濃度の測定および測定値の相関分析を行った。被検者21名の解析を終了した途中経過を、学会発表した。以下、その詳細である。平均血液オキシトシン濃度は、471.8 +/- 314.4 pg/ml、平均唾液オキシトシン濃度 61.3 +/- 36.0 pg/mlであった。その相関値は、r = 0.485、p = 0.026であった。年齢と性別を制御変数として偏相関係数を算出したところ、r = 0.560、p = 0.013であった。なお、測定内変動係数は10%以下であった。以上の結果より、被検者の血液オキシトシン濃度と唾液オキシトシン濃度に有意な相関が認められ、唾液オキシトシン濃度測定にて血液オキシトシン濃度測定の代用が可能であることが示唆された。現在、残りの被検者の検体解析を継続して行っており、上記の結果が追認可能か調べている。また、社会性を示す視線測定機器(GazeFinder)の測定値や心理検査尺度(AQ、SRS)との関連についても解析中である。その結果については学会発表および論文投稿により、得られた情報を発信していきたいと考えている。
すべて 2015 2014
すべて 学会発表 (2件)