老人性痴呆や運動障害などの神経疾患は、その症状の多様性のため認知機能や運動機能を客観的に評価することは難しい。マーカー分子の発現量測定から機能障害の程度を評価できれば、臨床において極めて有用なツールとなり得る。そこで、孤発性パーキンソン病モデルを用いて脳機能障害に関与すると考えられるユビキチンリガーゼHRD1やその関連分子を中心に機能解析を行った。 神経細胞SH-SY5Yに6-hydroxydopamine(6-OHDA)を暴露させ、脳機能障害モデル細胞を作出したところ、小胞体ストレス応答分子GRP78、94を誘導し、細胞死を起こしていることから小胞体ストレスを惹起していることを確認した。そして、HRD1およびHRD1安定化分子SEL1Lの発現量を検討したところ、蛋白質レベルの発現上昇を確認した。また、HRD1の強制発現により6-OHDA誘発細胞死が抑制され、RNAiによりHRD1の発現量を抑制したところ、6-OHDA誘発細胞死が増強した。さらにSEL1Lの発現を抑制したところ、HRD1の発現が低下し、それに伴い6-OHDA誘発細胞死が増強したことから、HRD1とSEL1Lは協調的に6-OHDA誘発細胞死に対して保護的に働くことが示唆された。 本研究により、HRD1およびSEL1Lは孤発性パーキンソン病モデルにおいて新たな治療ターゲットとなり得る可能性が考えられた。また、孤発性パーキンソン病モデルにおいてこれら分子の発現量が上昇していることから、パーキンソン病におけるマーカー分子の一つとなり得る可能性が示唆され、今後さらなる検討が必要であると考えられた。
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