研究課題/領域番号 |
25860114
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梶原 望渡 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (70645506)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トランスポーター / ドパミン / ナトリウム / 体液量調節 / MATE / H+/有機カチオンアンチポーター / 腎臓 |
研究概要 |
Multidrug and toxin extrusion(MATE)は、2005年に単離されて以来H(+)/有機カチオン逆輸送を媒介する薬物トランスポーターとしての解毒機能を中心とした解析が行われてきた。しかし、内因性基質の膜輸送に絡むMATEの生理学的役割は未だ明らかにされていない。本研究は、腎MATE1の新しい生理機能として、腎組織内で生合成されたドパミンによるNa(+)利尿制御因子としての役割解明を目指す。平成25年度は下記3項目について検討した。 1. MATEのドパミン輸送特性の解析:ヒト(h)MATE1, hMATE2K, マウス(m)MATE1を介した[(3)H]ドパミン輸送は濃度依存性を示し、それぞれのトランスポーターに対するVmax/Km値 (μL per mg・protein・min-1) (mean ± S.E.)が7.70 ± 1.67、3.44 ± 0.78、17.20 ± 2.72であったことから、ドパミンの輸送能力はmMATE1 > hMATE1 > hMATE2-Kであることが明らかとなった。 2. MATEの尿中ドパミン排泄における役割の評価:volume expansion実験で回収した尿のドパミン量を定量した結果、野生型(WT)マウスで認められた尿中ドパミンは、Mate1ノックアウト(KO)マウスではほとんど認められなかった。また、WTマウスの尿中Na(+)及びCl(-)排泄量はvolume expansionに伴って、それぞれ12.3倍、10.4倍にまで増加したが、Mate1 KOマウスでは1.5倍、2.3倍にとどまった。 3. Mate1 KOマウスの体水分量の評価:乾燥実験の結果、Mate1 KOマウスの体水分割合はWTマウスと比較して4%有意に高いことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画として掲げていた、MATEのドパミン輸送特性の解析、MATEの尿中ドパミンにおける役割の評価、Mate1 KOマウスの体水分量の評価については、ほぼ達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
MATE阻害剤が、MATEのドパミン輸送を阻害しNa(+)利尿を抑制するのか否かを明らかにするために、MATE阻害剤としてこれまで明らかにされた阻害薬を中心に検討を行う。 まず、尿細管管腔中へのドパミン排泄が、阻害薬により抑制されるかを確かめるためにvolume expansion実験を行う。阻害薬投与野生型マウスとvehicle投与野生型マウスの尿を回収し、それぞれの尿中ドパミン量をLC-MS/MSで定量する。また、尿中Na(+)量をイオン電極法で定量する。さらに、MATE阻害薬投与による体液貯留の有無を検討するため、安楽死させたマウスの体水分割合を評価する。MATE阻害薬の血中及び腎組織中濃度はLC-MS/MSを用いて数値化する。なお、検討すべきMATE阻害薬としてピリメタミン、シメチジン、レボフロキサシン、イマチニブを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、秋に2つの国際学会に参加する予定だったが、その後薬剤部内で急な異動・退職に伴う薬剤師人数減があり病院の10月以降の薬剤業務に支障をきたすことになったため、1学会のみの参加に変更することとなったため。 試薬、ガラス器具及び実験動物の購入費、動物飼育施設管理費、学会発表の参加費、論文投稿の費用として使用する計画である。
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