研究課題
本研究では「精神神経疾患治療薬の個別化投与設計法の開発」を目指した臨床研究である。以下に、H26年度に得られた主な成果を示す。1. 使用頻度の高い抗てんかん薬・気分安定薬であるバルプロ酸(VPA)は、その長期使用により体重増加や脂肪肝といった副作用が発現し、臨床で問題となっている。従って、VPA服用患者の肥満や脂肪肝に関連する因子を解明することは、その早期予測を可能とし、延いては心血管疾患の予防にもつながると考えられる。検討1:VPA服用患者の肥満発現に及ぼす患者要因の探索小児てんかん患者を対象として、VPA服用後の体重増加に関係する要因を検討したところ、知的障害合併者では非合併者に比べて肥満の累積発症率が高かった(ハザード比:6.7)。また、V知的障害合併者でのみ、体重増加作用のあるカルバマゼピンやクロバザムの併用が、VPA服用後の体重増加に関係した。従って、本研究結果より、知的障害を合併するVPA服用患者では肥満の有無を注意深く確認し、特にカルバマゼピンやクロバザム併用時には体重変動を細かくモニタリングする必要があることが示唆された。検討2:VPA服用患者の肝障害に関するmodeling & simulation母集団薬物動態-薬力学解析の手法を用いて、VPAの肝障害発現に及ぼす遺伝因子並びに他の患者因子の影響とその程度を検討したところ、VPA服用後のγ-glutamyltransferase上昇のリスクに、VPA暴露量、抗酸化酵素superoxide dismutase 2(SOD2)の活性低下遺伝子型、知的障害合併が関係した。本成果により、本研究により、VPA服用患者での肝障害リスクの軽減を目的とした、知的障害の有無及びSOD2遺伝子型に基づくVPAの至適投与量の設定が可能となることを示唆した。
2: おおむね順調に進展している
本臨床研究の対象となる精神神経疾患治療薬(抗てんかん薬、気分安定薬、抗うつ薬、抗精神病薬)の服用患者から、遺伝情報等の臨床情報を計画通り収集できており、本年度は母集団薬物動態―薬力学解析を用いたモデリング&シミュレーションによる個別化投与設計法の解析結果も、臨床応用に向けて順調に蓄積されているため。
本研究課題の最終目標は精神神経疾患治療薬の個別化投与設計法を開発し、臨床に還元することである。今年度は、これまでの研究成果をさらに発展させ、各薬物に対して、有効性が期待でき、かつ、副作用発現リスクが低い最適な投与量を、遺伝等の患者因子毎に提示する予定である。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 4件)
Neuropsychiatric Disease and Treatment
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