前年度までに実施した吸入リポソーム製剤のin vitroにおける安定性・吸入特性評価に基づいて、最終年度ではラットによるin vivo実験を中心に、吸入リポソーム製剤の肺内挙動や安全性を評価しリポソーム製剤処方の最適化を試みた。モデル高分子医薬(FITC標識デキストラン)をリポソームへ封入し、構成脂質、粒子物性(粒子径、粒子表面特性)が薬物の肺内滞留性に及ぼす影響について評価した。その結果、リポソーム脂質膜に吸収促進剤として汎用されているスペルミンを組み込むことで、吸入後の薬物及びリポソームの肺組織移行性を向上させることに成功した。さらに、リポソーム表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾し、PEG分子量や修飾量などを最適化することで、リポソームコア粒子の物性に関わらず薬物を長期間肺内で滞留させることができた。また、低分子薬物を用いた検討ではあるが、相転移温度が比較的低いリン脂質を組み込んだ薬物徐放性リポソームをラットへ経肺投与することにより、肺局所における薬理効果を持続化できることも見出している。これらの知見を活用し、現在は肺疾患モデル動物に対する核酸医薬(siRNAなど)封入リポソームの有効性についての検討を試みている。
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