研究課題
若手研究(B)
本年度はヒトiPS細胞から腸管上皮細胞への分化がより効率的に進むような低分子化合物の探索を行い、その方法によって分化させた腸管上皮細胞様細胞の機能解析を行った。ヒトiPS細胞から分化させた腸管幹細胞様細胞から腸管上皮細胞への分化誘導の過程において、ある低分子化合物を用いることで腸管上皮細胞のマーカー遺伝子であるsucrase-isomaltaseおよび主要な薬物代謝酵素であるCYP3A4の発現は顕著に増加した。また、その他のマーカー遺伝子であるvillin 1やISX、腸管に発現する薬物トランスポーターであるSLC15A1、ABCB1、ABCG2の発現も認められた。このことから、このたびヒトiPS細胞から腸管上皮細胞への分化誘導を促進させる有用な低分子化合物を見出すことができたと考えられた。この腸管上皮細胞様細胞の機能評価を行ったところ、ペプチドトランスポーターを介したペプチドの取り込み能が認められた。また、CYP1A、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4、UGT、SULTなど各種薬物代謝酵素による薬物代謝活性も検出された。特にCYP3A4については、1α、25-ジヒドロキシビタミンD3の処理により、mRNA発現は顕著に誘導され、さらに代謝活性の誘導も認められた。これらの機能は腸管上皮細胞に特徴的な機能であり、本研究で分化誘導させた腸管上皮細胞様細胞は創薬研究における薬物動態評価系としての利用の可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
本年度はヒトiPS細胞から腸管上皮細胞への分化を促進する低分子化合物を見出すことができた。また、次年度に予定していた機能解析にも着手し、分化させた腸管上皮細胞様細胞は腸管に特徴的な機能も有するという良好な結果も得ている。さらに腸管幹細胞の培養についても予備的な検討を始めている。したがって、おおむね順調に進展していると考える。
今後は本年度確立した分化誘導法に従って分化させた腸管上皮細胞様細胞の機能解析をさらに進めていき、薬物動態評価系としての利用の可能性を探っていく。あわせて当初の計画通り、腸管幹細胞の維持培養等についても検討を行っていく。
効率的に研究を進展させるために、腸管上皮細胞への分化誘導とその細胞の機能解析を一連の流れとして研究を進めたため生じた。残額は次年度の請求額と合わせて必要な消耗品の購入に使用する予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 産業財産権 (2件) (うち外国 2件)
Drug Metab. Pharmacokinet.
巻: 29 ページ: 44–51
10.2133/dmpk.DMPK-13-RG-005
巻: in press ページ: in press
10.2133/dmpk.DMPK-13-RG-104