研究実績の概要 |
前年度の研究において、ヒトiPS細胞から腸管上皮細胞への分化の促進もしくは分化させた細胞の薬物動態学的機能(薬物代謝能、 CYP3A4誘導能、ペプチドトランスポーターを介したペプチドの取り込み能)の獲得に有用な低分子化合物を複数見出すことができた。そこで、本年度はこの低分子化合物に共通する作用を有する低分子化合物群を用いて、腸管上皮細胞への分化を行った。その結果、多くの化合物において腸管上皮細胞マーカーやCYP3A4の発現増加および薬物代謝酵素活性、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3による CYP3A4の誘導が認められた。したがって、昨年度見出されたヒトiPS細胞から腸管上皮細胞への分化に有用な低分子化合物は、化合物特有の効果ではなく、これらの化合物が有する作用によるものであることが示唆された。 また、ヒトiPS細胞から分化させた腸管幹細胞の維持培養および凍結保存についても検討を行ったところ、腸管上皮細胞への分化能を維持したまま、1ヶ月程度培養することが可能であった。さらに、この細胞は凍結保存も可能であった。 本研究で得られた成果は、ヒトiPS細胞から作製した腸管上皮細胞の創薬研究への応用に向けて有用な知見であると考えられる。
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