研究課題/領域番号 |
25860121
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
杉山 育美 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (80509050)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リポソーム / EGCG / ラミニンレセプター |
研究概要 |
緑茶成分のひとつである(-)-epigallocatechin-3-gallate (EGCG)が67kDaラミニンレセプター(67LR)と結合するとアポトーシスを誘導することより、悪性度の高いがん細胞に高発現する67LRを標的としたリポソーム製剤の開発を目指し検討した。表面にEGCGを修飾したリポソームはがん細胞へ到達後、発現した67LRへ結合しアポトーシスを誘導、細胞死を導くとともに、リポソームには抗がん剤を内封することで抗がん剤による抗腫瘍効果も期待している。すなわち、正常細胞を障害するような副作用を抑制し、かつ効果的ながん治療を可能とすると考えた。 平成25年度は大きく3つの成果を得た。ひとつめにEGCG修飾リポソームの調製方法を確立し、EGCGの修飾量や抗がん剤ドキソルビシン(DOX)の内封量などを測定し物性評価も行った。ふたつめに異なる種類のがん細胞を用いた殺細胞効果を検討した。DOXの水溶液に比べEGCG修飾リポソームで強い殺細胞効果を得た。さらに殺細胞効果はEGCGの修飾量に影響され、その効果はEGCGの修飾量に比例するものではないと考えられる結果を得た。すなわち、EGCGの修飾量が多ければ多いほど強い効果を示すものではない可能性が示唆された。最後に、EGCG修飾リポソームはin vitroにおいては優れた効果を示したが、in vivoにおいては速やかに血中より消失してしまうことを明らかとした。そこで、血中での長期滞留性を得るためにPEG修飾が必須であるとの考えよりEGCG-PEG脂質の合成法や構造をデザインし合成を試みた。合成したEGCG-PEG脂質をリポソームへ修飾した結果、目的とする量を修飾することは困難であることが明らかとなった。そこで、平成26年度での検討にむけて更に検討を重ね何種類かのEGCG-PEG脂質を合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に各種がん細胞に発現している67LRの発現量をwestern blot解析で実施する予定であったが、実施に至らなかった。Western blot解析に必要な機器や試薬は現在購入している途中であり、平成26年度には最優先で本検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
・各種がん細胞の67LR発現量と薬効との評価 (in vitro):Western blot解析を行い、67LRの発現量を明らかにする。その後、67LR発現量と殺細胞効果、または薬物の細胞移行性との相関性を評価する。 ・EGCG-PEG修飾リポソームを確立:目的とするリポソームの確立に至っていないため、EGCG-PEGをリポソーム膜表面に修飾する方法を多方面より検討し、基本的な物性データを得る。 ・EGCG-PEG修飾リポソームの血中滞留性評価 (in vivo):正常マウスへEGCG-PEG修飾リポソームを投与し、経時的に採血を行うことによりリポソームの血中滞留時間を評価する。 ・抗腫瘍効果検討:67LRの発現量が最も多いがん細胞をマウス背部皮下に移植し、EGCG-PEG修飾リポソームを尾静脈内投与することによる抗腫瘍効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
がん細胞に発現している67LRの発現量をwestern blot解析で実施する予定であったが、実施に至らなかったため、細胞培養に必要な培地や消耗品に加え、解析に必要な試薬などの購入が遅れててしまった。さらに、論文投稿に及ばなかったため、論文投稿にかかる経費もなく、次年度使用額が生じてしまった。 Western blot解析を行うために必要な細胞培養にかかる試薬や培地、消耗品の購入をする。さらに、平成25年度に購入し終わらなかったWestern blot解析用の物品や試薬も購入する。動物実験も進める予定であるため、マウスの購入やその飼育費に使用する予定である。 その他、計画時に挙げた消耗品等は予定通りに購入する。
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