緑茶成分のひとつである(-)-epigallocatechin-3-gallate (EGCG) が67kDaラミニンレセプター (67LR) と結合するとアポトーシスを誘導することより、悪性度の高いがん細胞に高発現する67LRを標的としたリポソーム製剤の開発を目指し検討した。 EGCGをリポソームに修飾するためにはアンカー部が必要となる。最初にEGCG-dipalmitateを合成し、リポソーム修飾を行った。EGCG-dipalmitate修飾リポソームを用いた殺細胞効果の検討では、67LR高発現のB16メラノーマ細胞に対して効果が認められた (in vitro)。しかしながら、本リポソームをマウスに投与した結果、速やかに血中より消失した。これは組織分布評価の結果よりリポソームが異物認識されたことによるものであり、リポソームの血中滞留性を確保するためにはpolyethyleneglycol (PEG) が必要であることが明らかとなった。そこで、EGCGとアンカー部の間にPEGを結合させた2種類のEGCG誘導体を合成した。新たなEGCG誘導体を修飾したリポソームは血中滞留性を改善した。また、western blottingにより細胞種による67LRの発現を評価し、in vitroにて67LR発現の有無によるEGCG誘導体修飾リポソームの殺細胞効果を評価した。その結果、67LR発現細胞に対して強い殺細胞効果が認められた。さらに、これら細胞に対してEGCG誘導体修飾リポソームに内封した薬物の細胞への移行性が優れていることが明らかとなった。最後に、担癌マウスに対する抗腫瘍効果検討を実施した。リポソームのEGCG修飾量が不十分であったことにより本リポソームの有意な抗腫瘍効果は得られなかったが、EGCG誘導体修飾による影響は認められた。今後、目的達成を視野に引き続き検討する。
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