平成26年度は、脳性小児麻痺治療薬を目指したエリスロポエチン含有乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)ナノスフェア製剤の調製時にPLGAの自己修復作用を応用したガラス転移点で溶媒留去を行うという新たな調製方法を用いることで初期バーストを抑制し、脳移行性を向上することができる事実を見出した。 ナノスフェアの調製は、w/o/wエマルション型溶媒留去法を用い、使用するPLGAのガラス転移点で外水相を保温して調製を行った。自己修復エリスロポエチン含有PLGAナノスフェアは、整粒性に富んだ表面構造の滑らかな粒子を得た。自己修復を行った製剤の初期バーストは、自己修復を行わなかった製剤のそれと比較して低値を示した。この理由として、粒子表面構造の小さな凹凸が減少したことおよび比表面積が減少したことにより、粒子からの安定した低濃度での薬物放出をもたらしたことが示唆された。さらに、自己修復を行った製剤は自己修復を行っていない製剤よりも高いBBB透過性を示し、キトサン添加製剤はキトサン非添加製剤と比較し有意に高いBBB透過性を示した。自己修復により粒子表面構造が滑らかになったこと、キトサン添加により粒子表面に正電荷が付加されたことが、BBB透過性を高めたと考えられる。 本開発製剤は、エリスロポエチン含有徐放性製剤の一つの剤形を提案するものであり、その高い脳移行性から脳性小児麻痺治療薬としての有効性が期待できる。また、自己修復を応用した調製方法による初期バースト抑制と脳移行性向上、キトサン添加による脳移行性向上という本研究で得られた知見は、今後のタンパク含有徐放化製剤開発への応用が期待できる。
|