研究概要 |
平成26年度研究費の前倒し申請の都合上、溶出試験器の購入が大きく遅れたため、まず、アルベンダゾール(AZ)の溶解度と膜透過性のデータから溶解度律速時における吸収性の予測を試みた。 吸収予測にはMaximum Absorbable Dose (MAD)の式(Xat=P×S×Cs×t)を利用した。Xatは時間tにおける消化管からの薬物吸収量、Pは薬物の消化管膜に対する膜透過性、Sは消化管内表面積、Csは消化管内溶液における薬物の飽和溶解度、tは消化管内薬物濃度がその飽和溶解度で推移している時間である。本検討では,吸収の部位差を評価するため、消化管を小腸上部、小腸下部、大腸の3つの部位に分けた.そして,各部位におけるP、S、Cs、tを評価することにより、それぞれの部位からの吸収量(Xaupper,t、Xalower,tおよびXacolon,t)をMADの式から求め、それらを合計することにより消化管全体からの総吸収量(Xatotal,t( Xaupper,t+Xalower,t+Xacolon,t))を算出した。さらにXatotal,tを投与量で除すことにより,消化管吸収率(Fa)を評価した。 始めに、絶食時におけるラットの小腸上部、小腸下部および大腸の水分中の総胆汁酸濃度、リン脂質濃度、pHを反映したラット小腸上部・下部人工腸液および人工大腸液を作製した。続いて、消化管各部位のみかけの膜透過性を各人工腸液にAZを溶解させin situ closed loop法により、飽和溶解度をShake-Flask法により評価した。消化管各部位の飽和溶解度持続時間は、経口投与後の消化管内AZ濃度を測定することにより求め、みかけの表面積は小腸および大腸の長さを直接測り計算した。 これらの結果から経口投与後2.5時間におけるin vivo Faを予測したところ、その値は25.6%となり、各部位の人工腸液を用いて予測したFaの2.5時間値24.5%と非常に近い値となった。
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