研究課題/領域番号 |
25860134
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
古賀 允久 福岡大学, 薬学部, 助教 (60570801)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バレニクリン / 副作用 / 心血管イベント |
研究概要 |
経口禁煙補助薬バレニクリンは、禁煙治療において画期的で有効性の高い薬であるが、心血管イベントの重篤な副作用が発現することがある。しかし、この発症機序に関する基礎研究は殆どない。そこで、バレニクリンの心血管イベント発症の機序を解明し、この有害作用の予防・軽減・回避対策の構築、また新たな経口禁煙補助薬の開発へと連結することを目的として本研究を企てた。具体的には、動脈硬化モデルマウスを用いて「バレニクリンが、炎症性細胞のα7 nAChRを介して動脈硬化症の発症・進展、不安定化を惹起し、心血管イベントを発症させる。」という仮説を検証し、その発症機序を追究するものである。 バレニクリン投与により、動脈硬化巣の形成を促進することを平成25年度に明らかにした。平成26年度は、動脈硬化症の発症・進展、不安定化をα7 nAChRを介して惹起するかを動物実験、細胞実験で明らかにする。 バレニクリンをApoE KOマウスに3週間投与したところ、0.05mg/kg/日の低用量の濃度では、動脈硬化層の形成を促進しなかった。その一方、0.5mg/kg/日の高用量の濃度で投与したところ、動脈硬化巣の形成を有意に促進させたことを平成25年度は明らかにした。また、ApoE KOマウスの動脈硬化巣内におけるα7 nAChR発現を確認するために、血管内皮細胞、マクロファージとα7 nAChRで蛍光二重染色を施行し確認した。動脈硬化巣内においてα7 nAChRが血管内皮細胞、マクロファージに発現していることが明らかとなった。 以上、平成25年度はApoE KOマウスに0.5mg/kg/日の高用量のバレニクリンを投与することで、動脈硬化巣の形成を促進したことを明らかにし、α7 nAChRを介したバレニクリンの作用が心血管イベントを惹き起こす可能性を提起した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経口禁煙補助薬バレニクリンは、禁煙治療において画期的で有効性の高い薬であるが、心血管イベントの重篤な副作用が発現することが報告されている。 そこで本研究は、バレニクリンのこの有害作用の予測・軽減・回避対策の構築、さらに有害作用の低減化とともに優れた禁煙効果を有する新薬の開発へと繋げるために、バレニクリンによる心血管イベント発症のメカニズムを明らかにすることである。 このメカニズムを明らかにするため、ApoE KOマウスにバレニクリンを投与し、バレニクリンによる動脈硬化巣の形成を検討・評価した。本年度は、①高用量のバレニクリンにより動脈硬化形成を促進させること、②バレニクリンによる動脈硬化巣形成にα7 nAChRを介する可能性を示した点を考慮すれば、研究の進捗状況としておおむね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に得られた結果をもとにして、平成26年度では動脈硬化巣におけるα7 nAChRを介するバレニクリンの作用を検討する。まずApoE KOマウスにバレニクリン、α7 nAChRアンタゴニストであるメチルリカコニチン (MLA: methyllycaconitine)を併用する。 動脈硬化巣の面積を評価し、動脈硬化巣におけるα7 nAChRを介するバレニクリンの作用を精査する。 また動脈硬化巣内でα7 nAChRが、血管内皮細胞、マクロファージに発現していたことから、培養したマクロファージ、血管内皮細胞にバレニクリン、MLAを処置し、これらの細胞におけるα7 nAChRを介したバレニクリンの作用を明らかにする。 これらの成果は、バレニクリンによる心血管イベント発症における有害作用の予防・軽減・回避対策の構築、また新たな経口禁煙補助薬の開発へと連結する。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月末の学会発表の目的で、旅費を見積もり分で使用予定であったが、実際の支払いでは9830円の差額が生じ、その分次年度に繰り越すことになった。 平成26年度も、学会発表・参加予定であるため、今回の繰り越した分をそのまま旅費に追加して使用する予定である。
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