循環器系疾患における禁煙治療の重要性は、十分に認知されているにもかかわらず、その効果的治療法の選択は狭い。経口禁煙補助薬バレニクリンは、禁煙治療において画期的で有効性の高い薬であるが、心血管イベントの重篤な副作用が発現することがある。喫煙による心血管イベント発症のリスクを回避するためにバレニクリンの禁煙治療を行うにもかかわらず、逆にそのリスクを増大させるのは問題である。しかし、この発症機序に関する基礎研究は殆どない。 そこで、バレニクリンの心血管イベント発症の機序を解明し、この有害作用の予防・軽減・回避対策の構築、また新たな経口禁煙補助薬の開発へと連結することを目的として本研究を企てた。 平成25年度には、ApoE KO マウスにバレニクリンを3週間投与したところ、バレニクリンにより、動脈硬化巣の形成が促進したことを明らかにした。平成26年度では、動脈硬化巣におけるα7 nAChR(ニコチン性アセチルコリン受容体)を介するバレニクリンの作用を検討した。ApoE KOマウスにバレニクリンとα7 nAChRのアンタゴニストであるメチルリカコニチン(MLA)を併用し、動脈硬化巣の面積を評価した。MLAを5mg/kgを併用したところ、バレニクリンによるその動脈硬化巣の形成は抑制された。このことから、バレニクリンはα7 nAChRを介することで、動脈硬化巣の形成を促進し、心血管イベントのリスクを増大させることが示唆された。
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