骨格筋細胞は、多核の長大な細胞である。この細胞の形態形成や維持に関わる小胞輸送システムを解析する。成熟した骨格筋細胞・組織を解析するためには、現在のところ、個体モデルが必要である。骨格筋細胞に発現する、小胞輸送関連蛋白質のひとつに着目し、ノックアウトマウスの作出を計画した。これまでに、キメラマウス作出と、ヘテロ接合体の作出に成功し(平成25年度)、ヘテロ接合体同士の交配から、73匹のマウス仔を得た(平成26年度)。遺伝子型は、野生型:ヘテロ接合体:ホモ接合体の比が、10:13:1であり、メンデル比(1:2:1)から大きく外れた結果になった。また死産が多く、胎生期には発達しているが、出生前後で死亡することが考えられた。平成27年度では、死因の究明を行った。骨格筋組織では肉眼レベルでの形成異常は認められなかった。出生時に呼吸をはじめない個体や、不規則呼吸がみられたことから、肺の切片を作成し、観察したところ、完全な無気肺もあれば、一部領域が無気肺で、死亡している例が見つかった。肺以外でも、全身をくまなく形態形成の成否を観察できるように、ブロックフェースイメージング装置の新規開発をすすめている。マウス個体をまるごと3Dデータとし、パソコン上で解剖できる手法である。現在、装置は試作の段階であるが、脳室の閉鎖や拡張といった、通常の解剖作業では見つけにくい形態異常が見つかった。今後は、呼吸器系、神経系以外での形態異常についても明らかにしていく。また、装置をハイスループットにするための改良に取り組み、形態異常の程度や頻度を明らかにする予定である。
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