ASIC1aが成体脳海馬新生ニューロンの樹状突起の発達に及ぼす影響を解析するため、ASIC1a遺伝子を標的とした2種類の異なるshRNAとEGFPを共発現するレトロウイルスベクターを構築した。それらを用いたレトロウイルス選択的遺伝子導入にてマウス海馬新生ニューロンのASIC1aをノックダウンし、脳切片を作成、共焦点レーザー顕微鏡でEGFP陽性(=ASIC1aノックダウン)新生ニューロンのZスタック画像を取得した。3D画像解析ソフトにて樹状突起の形態を調べたところ、コントロールに比べ、2種類のASIC1a-shRNAでASIC1aをノックダウンした新生ニューロン(誕生28日目)ではそれぞれ総樹状突起長が短くなっていた。また、レーザー共焦点画像3D再構築によりスパインの形態を調べたところ、mushroomタイプのスパインの最大径が小さくなっていた。スパインの密度には有意差は認められなかった。現在、透過型電子顕微鏡を用いたスパインの微細構造の変化について検討中である。 当研究室が所有するASIC1aノックアウトマウスでもEGFPを発現するレトロウイルスで海馬新生ニューロンをラベルし、同様の手法(レーザー共焦点画像3D再構築)で形態解析した結果、誕生28日目の海馬新生ニューロンでは総樹状突起長が短く、スパインの大きさが小さい傾向が認められた。以上より、ASIC1aが樹状突起の発達とスパイン形成に重要な働きを持つことが確認できた。
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