研究課題/領域番号 |
25860148
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
堀口 幸太郎 杏林大学, 保健学部, 講師 (10409477)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 下垂体前葉 / 濾胞星状細胞 / S100βタンパク陽性細胞 / プロテオグリカン / 樹状細胞 / バイグリカン |
研究概要 |
1.ラット下垂体前葉細胞の一つである濾胞星状細胞は、S100βタンパクを発現することで同定される非ホルモン産生細胞である。この濾胞星状細胞は細胞外マトリックスの一種であるプロテオグリカンを発現することでも特徴づけられる。さらに濾胞星状細胞はheterogeneity性が高く様々な性質の細胞が総称されてそう呼ばれている。申請者はheterogeneity性を分離する方法として細胞外マトリックスの基底膜成分であるラミニンとの親和性に着目した。親和性を示す濾胞星状細胞(プロセスタイプ)と示さない細胞(ラウンドタイプ)に分類できることを見出して、それぞれを簡単にピペッティング操作によって単離する方法を発見した。そして単離した細胞を使いリアルタイムPCRやウェスタンブロッティング、免疫組織学的手法、in situ hybridization解析を行うことで、プロセスタイプがプロテオグリカンを発現する濾胞星状細胞であることを証明し、学術論文にアクセプトされた。 2.プロテオグリカンを発現しない濾胞星状細胞(ラウンドタイプ)からケモカインの一つであるCXCL10が発現することを分子生物学的手法、初代培養、in situ hybridization法を用いて明らかにし、それが樹状細胞様であることを証明した。この結果は学術論文にアクセプトされた。 現在は、プロテオグリカンを発現しないラウンドタイプの機能を解析している。今後、プロセスタイプの特徴づけと機能解析も明らかにし、プロテオグリカンを発現する細胞が前葉組織においてどのような意義を担っているかを解明する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ラット下垂体前葉細胞の一つである濾胞星状細胞は、S100βタンパクを発現することで同定される非ホルモン産生細胞である。この濾胞星状細胞は細胞外マトリックスの一種であるプロテオグリカンを発現することでも特徴づけられる。さらにこの濾胞星状細胞はheterogeneity性が高く様々な性質の細胞が総称されてそう呼ばれている。これまで下垂体前葉のstem/progenitor細胞、樹状細胞、アストロサイト、上皮細胞などの特性に分類できると予想されてきたが、実際の機能、性質、発生はほとんど不明であった。申請者はそのheterogeneity性を分類するために細胞外間トリックスであるラミニンやプロテオグリカンを利用した。その結果、樹状細胞様の濾胞星状細胞の単離に成功し、その機能と発生過程を現在解析している。本研究費により既に2報の投稿論文がアクセプトされており、現在1報をリバイス中である。研究業績から鑑みても当初の計画以上に進展していると判断できる。すでにプロテオグリカンを発現している濾胞星状細胞の1つのポピュレーションを単離していることから、今後はこれがどのような発生過程を経て下垂体前葉に存在するのか、そしてプロテオグリカンを発現することでどのような前葉の機能維持に関与しているのかを明らかにしていく。
|
今後の研究の推進方策 |
1.プロテオグリカンを発現しない濾胞星状細胞(ラウンドタイプ)の機能解析 濾胞星状細胞の一つのポピュレーションであるプロテオグリカンを発現しないラウンドタイプからケモカインCXCL10の発現が明らかになり、そのレセプターCXCR3はACTH産生細胞から発現が見られた。このことから、ラウンドタイプからのCXCL10がACTH産生に何らかの影響を与えている可能性があり、CXCR3アゴニスト、アンタゴニストを用いた機能解析を行う。 2.プロテオグリカンを発現する濾胞星状細胞の機能解析 濾胞星状細胞の一つのポピュレーションであるプロテオグリカンを発現するプロセスタイプを単離する方法を既に報告している。このポピュレーションからは、プロテオグリカンの中でもファイブロモジュリン、バイグリカン、デコリンなどが発現している。これらのレセプターとしてはlipoprotein receptor-related protein 3(Lrp3)が有名である。下垂体前葉でのこの発現と局在を明らかにする。またプロテオグリカンを発現する濾胞星状細胞がどのように組織内に分布しているのか、それが前葉の発生過程においてどのように変遷するのか興味深い。それを明らかにするために濾胞星状細胞特異的にGFPを発現するトランスジェニックラットの胎児から生体までの下垂体前葉を詳細に観察し、組織学的に観察していく。以上からプロテオグリカンを発現する濾胞星状細胞の発生、機能解明へとつなげる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(B-A)が5,587円と0円より大きくなった状況として、額が小さいためそれに見合う物品等購入に必要なものに該当がなかったため購入できなかったことが一つある。さらに2,3月中に使用予定を考えていたものの、実習など他の業務に忙殺されそれを使用する機会を逃したことも一つある。 次年度の使用額の物品費に加えることで、適切な使用を行う。
|