<目的>本研究では脂肪組織由来前駆細胞から巨核球・血小板へ分化誘導できる系を用いて、巨核球・血小板への終末分化過程における酸素微小環境変化に応答した代謝リモデリングの意義を明らかする。 <研究成果>本年度は4種類のC57BL/6JJclマウス(野生型、HIF1αloxP/loxP、HIF2αloxP/loxP、PHD2loxP/loxP)の鼠径部皮下脂肪組織から分離した初代培養脂肪前駆細胞を用いて、以下の3項目を検証した。 (1)巨核球分化誘導に関与する代謝リモデリングの解析:分化誘導後経時的に細胞を回収し、糖代謝関連因子の発現量変化を解析した結果、ピルビン酸脱水素酵素キナーゼPDK遺伝子群が発現上昇した。またピルビン酸脱水素酵素複合体PDHの293・300番目のセリンのリン酸化量の上昇がみられ、糖代謝の分化への関与が示唆された。 (2)巨核球分化誘導における低酸素の影響解析:低酸素応答因子HIF-1α・HIF-2αによる巨核球への分化誘導効率の影響を組換えアデノウイルスにより過剰発現させた細胞を用いて解析した。HIF-2αを過剰発現させた場合のみ、巨核球細胞表面タンパク質CD41発現量および核の多倍体化が抑制された。一方、HIF1α、HIF2α、プロリン水酸化酵素PHD2、各遺伝子をノックダウンした細胞を分化誘導してもCD41発現量および核の多倍体化に変化は見られなかった。以上より、巨核球分化誘導におけるHIFの寄与は少ない可能性が示唆された。 (3)巨核球分化誘導におけるコレステロール代謝の影響解析:コレステロール代謝を司る転写因子SREBPの阻害剤を分化誘導と同時に添加すると、核の多倍体化に変化は生じなかったが、CD41の発現量が減少した。またSREBPのアイソフォームのうち、SREBP-1a/2の活性が細胞内のコレステロール濃度上昇を促し分化に寄与する可能性が示唆された。
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