研究課題
本年度は、発生過程の腎臓に引き続き、再生過程の腎臓に発現するKv1.3チャネルの役割について明らかにするための研究を行った。まず、本チャネルの阻害薬であるMargatoxinの存在下で胎生腎組織を培養した結果、その発育が有意に障害されたことから、Kv1.3チャネルは、胎生腎の分化や増殖、アポトーシスの抑制に関与している可能性が高いと考えられた。さらにReal-time PCR法や抗体染色の結果、尿管芽のマーカーであるCalbindinの発現に比して、Pax2やWT1などの発現が有意に減少していた。従って、Kv1.3チャネルの阻害により、後腎間葉細胞から、その凝集塊であるCap mesenchymeやcondensed mesenchymeへの形成が障害されたと考えられた。一方で、より分化した構造体のマーカーであるWnt4やBMP7の発現量は変わらなかった。以上の研究結果より、尿管芽から後腎間葉細胞にかけて発現するKv1.3は、とくに腎発生初期の分化の過程に大きな役割を果たしていると考えられた。一方で、疾患モデルラットを用いたin vivoの実験により、尿細管の再生過程を伴う慢性腎不全の病態下では、間質の線維化とともに、腎臓のリンパ球におけるKv1.3チャネルの発現が増加することが明らかになった。さらに、本チャネルの阻害薬であるMargatoxinを治療的に投与したところ、腎線維化の改善とともに、リンパ球の増殖が抑えられたことから、本チャネルが、リンパ球の細胞増殖を促している可能性が高いと考えられた。また、マウス胸腺リンパ球を用いたin vitroの実験の結果、Margatoxinや一部のCa2+拮抗薬、抗生物質、スタチン系の脂質降下薬は、Kv1.3チャネルを阻害することにより免疫抑制作用を発揮すると考えられた。Kv1.3はストア作動性Ca2+チャネルと連動しているため、Kv1.3はCa2+シグナルを介して作用を発揮すると考えられた。
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