平成26年度は前年度に引き続きオートファジー欠損に伴う腸管上皮の再生能低下におけるメカニズムを検討した。前年度の研究において腸管上皮特異的にオートファジー関連遺伝子、Atg5を欠損するマウス(ATG5fl/fl Villin-Creマウス)の腸陰窩(クリプト)に存在する未分化細胞(progenitor細胞)で活性酸素種(ROS)が高い状態にある事を見出していた。これまでにミトコンドリアが主要なROSの産生源であり、機能低下に陥るとその産生が亢進する事が報告されている。当該研究においてもROS量の多いオートファジーを欠損するprogenitor細胞でミトコンドリアの機能低下が確認され、こうしたミトコンドリアの形態異常が電子顕微鏡による観察から明らかになった。 さらに平成26年度の研究でオートファジー欠損に伴い、Lgr5(leucine-rich-repeat-containing G-protein coupled receptor 5)陽性(+)腸幹細胞が劇的に減少する事を見出した。Lgr5+幹細胞は腸管上皮の再生に不可欠である事からも、オートファジー欠損に伴う腸管上皮の再生能低下にLgr5+幹細胞の減少が大きく影響していると考えられる。これまでの腸管上皮細胞におけるオートファジーの役割に関する研究では専らパネート細胞に焦点が当てられていたが、本研究により腸幹細胞などのprogenitor細胞における恒常性維持にもオートファジーが重要な役割を担っている事が明らかになった。
|