研究課題/領域番号 |
25860161
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
天野 勇治 信州大学, 医学部, 助教 (50624681)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インターロイキン2受容体 / インターロイキン4受容体 / ユビキチン非依存性小胞輸送 / ユビキチン |
研究概要 |
細胞膜受容体のリソソームへの小胞輸送は、従来知られていたユビキチンを目印としたユビキチン依存性小胞輸送と、我々が見出したユビキチン非依存性の小胞輸送の2つのルートがある。我々はIL-2受容体β鎖(IL-2Rβ)、IL-4受容体α鎖(IL-4Rα)がユビキチン非依存性に小胞輸送されること、またその輸送の分子機序としてユビキチン依存性小胞輸送に関わる「Hrs」がIL-2Rβ並びにIL-4Rαの細胞内領域の疎水性アミノ酸クラスターに結合して小胞輸送していることを明らかにしている。この疎水性アミノ酸クラスターのアミノ酸配列はIL-2Rβはアミノ酸336-338(FFFHL)、IL-4Rαはアミノ酸410-415(LFLDLL)であった。小胞輸送に関わるアミノ酸の1次配列を「小胞輸送シグナル」と称するが、本研究では、我々の見出した疎水性アミノ酸クラスターが「小胞輸送シグナル」として機能しているかどうかを検証した。トランスフェリン受容体は多くの場合、recycle endosomeから細胞表面に戻ることによって、再利用される。小胞輸送シグナルをトランスフェリン受容体のC末端に連結すると、このキメラ受容体はrecycle endosomeに輸送されず、リソソームへと輸送され、分解される。同様にrecycle endosomeに輸送されるIL-2Rαの細胞内領域C末端に上記の疎水性アミノ酸クラスターを連結して、その細胞内輸送を観察したところ、リソソームに輸送されず、野生型のIL-2Rαと同様にrecycle endosomeへ輸送されたことから、完全な「小胞輸送シグナル」として働くためには未だ未同定の領域があると判明した。ところが、このクラスターのC末に続く任意の30アミノ酸の付加のみでIL-2Rαのキメラ受容体はリソソームに輸送されたことから、IL-2RβとIL-4Rαの疎水性アミノ酸クラスターは完全な「小胞輸送シグナル」と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々の見出した疎水性アミノ酸クラスターはユビキチン非依存性小胞輸送に必須の領域であることは既に証明していたが、小胞輸送シグナルとして十分に機能するかどうかは、未だ確認できていなかった。本年度、予定より順調に解析が進み、IL-2Rβ並びにIL-4Rαの疎水性アミノ酸クラスターが小胞輸送シグナルである結果を得ることが出来た。さらに、論文としてまとめることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
アトピー等アレルギー患者の検体収集が100例となったのでIL-2R並びにIL-4Rαの疎水性アミノ酸クラスターの解析を行う。また、同時に両受容体の細胞質領域全体の塩基配列も解読して、アトピーと関連する多型や変異の有無について検討する。IL-4Rαについては喘息との関連が示唆されている576番目のグルタミンがアルギニンに置換する遺伝子多型(Q576R)を本検体から検出しており、こんごの解析に期待が持てる。IL-2Rについてはアレルギーと関連する遺伝子多型の報告がほとんど無く、本研究が先駆けとなる可能性を有する。
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