研究実績の概要 |
電位依存性ホスファターゼVSPは電位センサーと酵素ドメインを持ち、酵素活性が膜電位によって制御される。VSPはイノシトールリン脂質、特にPI(3,4,5)P3, PI(3,4)P2, PI(4,5)P2を脱リン酸化する。最近、VSPが膜電位依存的に基質選択性を変えることが報告されたが、本課題ではその分子メカニズムを解明することを目的とした。VSPはPI(3,4,5)P3からPI(3,4)P2を産生し、さらにPI(3,4)P2からPI(4)Pを産生する。そのため昨年度はまず細胞膜上のPI(3,4)P2の増減を高い時間分解能で検出することを目的として、FRETの方法を用いてPI(3,4)P2の動態を計測する方法を構築した。さらにその分子メカニズムを明らかにするため、今年度は蛍光を持つ人工アミノ酸を酵素ドメインに導入し、電位センサーが動作した際の構造変化をリアルタイムでモニターすることを試みた。ゼノパスの卵母細胞にVSPと人工アミノ酸(Anap)、およびAnapを特異的に認識するtRNAとアミノアシルtRNA合成酵素をコードしたプラスミドを導入することで、部位特異的に人工アミノ酸を導入(Anap)することに成功した。その結果、酵素ドメインの多くの部位で膜電位依存的な蛍光変化を検出した。VSPが膜電位依存的に基質特異性を変えるメカニズムの一つとして、膜電位依存的に酵素ドメインが複数の構造をとっている可能性がある。今後は蛍光変化の膜電位依存性を詳細に解析することで、その可能性を探っていく。またVSPの基質は細胞膜上に存在しているため、酵素ドメインが膜電位依存的に細胞膜との距離を変えることが基質選択性に関わっている可能性も考えられる。そのため細胞膜と酵素ドメインの距離の膜電位依存性も調べていく予定である。
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