研究課題/領域番号 |
25860164
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
遠藤 光晴 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90436444)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Ror1 / Ror2 / アストロサイト / 炎症 / 脳損傷 |
研究概要 |
アストロサイトは、脳内の恒常性維持に重要な役割を担っており、炎症反応を伴う様々な中枢神経傷害においては活性化され、反応性アストロサイトと呼ばれる形態および機能変化を示す。しかしながら、このような中枢神経障害時に見られるアストロサイトの変化をもたらす分子機構および意義については未だ不明な点が多い。我々は、これまでに培養アストロサイトを用いた解析から受容体型チロシンキナーゼRor1が反応性アストロサイトにおいて発現誘導される可能性を見出したことから、平成25年度における本研究では、実際に脳内炎症応答を伴う中枢神経障害時にアストロサイトにおいてRor1が発現誘導されるかどうかについて検証を行った。中枢神経障害モデルとして成体マウスの大脳皮質に外傷を与えた場合において、損傷部周辺の組織中でRor1の発現が誘導されることが示された。興味深いことにRor1のホモログであるRor2の発現も誘導されることが明らかになった。我々はこれまでにRor1とRor2がともに発生過程の神経幹細胞において高発現していることを見出しており、反応性アストロサイトが未分化な性質を再獲得(脱分化)する上でRor1およびRor2の発現誘導が重要な役割を担っているのではないかと考えられた。また、培養アストロサイトを用いた解析から、Ror1の発現は炎症性サイトカインのIL-1βおよびTNF-a刺激によって誘導されるのに対して、Ror2の発現は増殖因子のbFGFおよびEGF刺激によって誘導されることを見出した。これらの因子は損傷部周辺で発現上昇することから、脳損傷時においてもこれらの因子がアストロサイトでのRor1とRor2の発現誘導を引き起こすのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に準じて解析を行うことにより、Ror1およびRor2が中枢神経障害時に損傷部周辺で発現誘導されることを示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究結果を踏まえて、脳外傷時に見られた損傷部でのRor1およびRor2の発現誘導がアストロサイトで起こっているかどうかについて、アストロサイト特異的レポーター遺伝子発現トランスジェニックマウスを用いて解析を行う。アストロサイトで発現誘導されることが明らかになった場合には、平成25年度中に準備したアストロサイト特異的Ror1およびRor2コンディショナルノックアウトマウスを用いて、Ror1とRor2が反応性アストロサイトで発現誘導される意義について解析を行う。また、Ror1とRor2のリガンドとして想定されるWnt5aの関与についても、アストロサイト特異的Wnt5aコンディショナルノックアウトマウスを用いて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では炎症病態時に反応性アストロサイトで誘導されるRor1の機能解明を目的として、アストロサイト特異的Ror1 コンディショナルノックアウトマウスを用いた実験計画を立て、平成25年度に必要な当該助成金として計上した。しかしながら、炎症反応を伴う脳内では、反応性アストロサイト以外の細胞でもRor1の発現誘導が起こることが示唆されたため、脳内の反応性アストロサイトを同定する目的でアストロサイト特異的にレポーター遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを用いる必要が生じた。これに伴い、平成25年度に行う予定であった実験の一部を平成26年度に行うことにしたため。 翌年度分として請求した助成金については、当初の計画どおりに使用するとともに、次年度使用額については、アストロサイト特異的Ror1コンディショナルノックアウトマウスおよびアストロサイト特異的レポーター遺伝子発現トランスジェニックマウスなどの実験用動物の飼育・管理費とこれらのマウスを用いた分子・細胞レベルでの解析を行うための試薬等の経費として使用する。
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