研究課題/領域番号 |
25860166
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
川口 真紀子 宮崎大学, 医学部, 助教 (90405598)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 表皮 / セリンプロテアーゼ / セリンプロテアーゼインヒビター |
研究概要 |
表皮におけるHepatocyte growth factor activator inhibitor type 1 (HAI-1)の生理的及び病態生理学的意義を明らかにするため、HAI-1ノックアウト(KO)マウスの皮膚にみられる表現型を解析したところ以下の成果を得ることができた。 透過電子顕微鏡による超微形態学的解析の結果、HAI-1 KO マウスは細胞間橋の形成不全、トノフィラメントのデスモソームへの収束異常がみられた。また、不死化したケラチノサイトの細胞株であるHaCaT細胞のHAI-1発現を抑制し、3次元培養を行ったところ、HAI-1抑制細胞では、デスモソームの長さが短くなっており、数の減少もみられた。さらに、KOマウスの皮膚組織と同様に、トノフィラメントとデスモソームの結合が減弱していた。次に、これらの異常を来たすメカニズムについて検討を行った。HAI-1 KD細胞にp38阻害剤を添加したところ、3次元培養においてHAI-1 KD細胞にみられた異常が回避されたことから、p38 MAPKの活性化が形態異常の原因であることが示唆された。HAI-1抑制細胞ではHAI-1の標的酵素であるmatriptaseの活性が上昇しており、その基質であるPAR-2の発現を抑制、あるいはアンタゴニストを添加したところ、p38の活性化が抑制され、HAI-1 KD細胞にみられた形態異常も回避された。これらのことから、HAI-1 KOマウスでは標的酵素であるmatriptaseの活性が上昇し、その基質であるPAR-2を介してp38が活性化し、表皮の形態異常をきたしていると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画にあげた項目についてはほぼすべて実施し、結果を得ることが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
HAI-1 KOマウスの表皮にみられる表現型の解析及び細胞間接着装置の形態学異常がおこるメカニズムの解析については順調に進展しており、HAI-1によるmatriptaseの制御破綻がPAR-2を介した細胞内シグナル伝達の異常をきたしている可能性が示唆された。今後は今回見出した分子以外に、HAI-1 KOマウスの表現型異常に関連がある新規分子の探索を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していた備品(PCR装置)を今年度は購入しなかったため、また、国際学会の参加旅費を他の予算から支出したために次年度使用額が生じた。 購入予定であった備品を次年度に購入する。
|