表皮におけるHepatocyte growth factor activator inhibitor type 1 (HAI-1)の生理的及び病態生理学的意義を明らかにするため、HAI-1ノックアウト (KO) マウス及びHAI-1発現を抑制した不死化ケラチノサイト細胞株を用いて解析を行った。平成25年度には、HAI-1 KOマウスにみられる表皮の異常は、HAI-1の標的酵素であるmatriptaseの活性亢進によるProtease-activated receptor-2 (PAR-2) を介したp38活性化が原因であることを示唆する結果を得た。平成26年度には以下の成果を得た。 (1)HAI-1抑制細胞でみられたp38活性化は、matriptaseの活性、発現をそれぞれ阻害剤 (Aprotinin)、si-RNAを用いて抑制すること、さらにPAR-2の中和抗体を添加することによっても回避されることから、HAI-1によるmatriptaseの活性調節異常が、PAR-2を介したp38活性化をもたらし、表皮の異常を来たすことが明らかになった。 (2)表皮においてHAI-1と相互作用する新規分子を探索するため、不死化ケラチノサイト細胞株から抽出した蛋白を抗HAI-1抗体を用いて免疫沈降し、HAI-1と共沈する蛋白を質量分析によっていくつか同定した。同定された蛋白の表皮における意義については、今後解析をすすめていく予定である。
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