平成26年度は前年度に引き続き、ラット皮質集合管新鮮単離標本における低浸透圧刺激によって活性化するCa2+流入経路の探索を目的に電気生理学的実験を主に行った。本年度は実験条件の見直しを行うことで陰イオン電流の影響を極力減らし、また電動式マイクロマニピュレーター(申請設備)を用いることで低浸透圧刺激下でも安定した全細胞電流の測定が可能となった。それによりconventional ホールセル記録法を用いて低浸透圧刺激によって活性化する陽イオン電流の測定に成功した。 この電流はCa2+濃度測定実験で観察された低浸透圧刺激によるCa2+濃度上昇と同様、電位依存性Ca2+チャネル阻害薬であるニカルジピンによって有意に抑制されたが、機械刺激受容チャネルの阻害薬であるガドリニウムには非感受性であった。またRT-PCRによってラット皮質集合管に電位依存性T型Ca2+チャネルのmRNA発現が確認された。一方で、今回観察された陽イオン電流はT型Ca2+チャネルの阻害薬であるニッケルには非感受性であった。さらにこの電流の薬理学的性質を調べたところTRPC3チャネル選択的阻害薬であるpyr3によって強く抑制されることが分かった。 以上の結果はこれまで皮質集合管における低浸透圧刺激時のCa2+流入経路として予想されていたTRPV4チャネルとは異なる低浸透圧活性化陽イオンコンダクタンスが存在することを示唆している。本研究で新たに観察された低浸透圧活性化陽イオン電流を担うニカルジピン及びpyr3に感受性のイオンチャネル分子のより詳細な同定については今後の課題である。
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