研究課題
若手研究(B)
本研究の目的はドーパミン(DA)の分泌制御機構について、有芯小胞の分泌制御に関与していると考えられているタンパク質CAPS2がどのように寄与しているか、という側面から研究を行うものである。これまでの研究において、まず我々はマウスのDA作動性ニューロンの分散培養系の確立を行った。現時点ではDAニューロンを主要に含む形での分散培養系は確立できていないが、少数のDA作動性ニューロンを含む培養系についてCAPS2とDA含有小胞の細胞内分布について免疫組織化学により同定した結果、内在性CAPS2とDA含有小胞特異的に発現するモノアミントランスポーターvMAT2が一定の確率で共局在するということを明らかにした。さらにこの共局在の分布はシナプス上に多く見られるが、シナプス外にも散見されることが確認された。さらに、DA含有小胞はDA作動性ニューロンの軸索のみならず樹状突起においても分泌されることが知られているため、軸索、樹状突起それぞれにおける分布について、それぞれのマーカータンパク質であるTau及びMAP2との共染色を行った結果、DA含有小胞とCAPS2の共局在性については軸索、樹状突起双方で存在することが確認された。一方でCAPS2と共局在していないvMAT2免疫陽性小胞群も一定数見られ、これが「CAPS2と共役しない分泌機構を有するDA含有小胞」なのか、「未だCAPS2と共役していない(最終的には共役する)DA含有小胞」なのかは現時点ではなおはっきりしていない。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画にあったDA含有小胞とCAPS2の細胞内局在について、マウスDA作動性ニューロンの分散培養を行い、その軸索・樹状突起及びシナプス内外の分布を明らかにできた点において、計画は順調に進展していると考える。しかしながら、DA含有小胞の分泌イメージングについては、pH感受性蛍光タンパク質を使用した系においても、DA含有小胞ラベル蛍光物質FNN511を使用した系においても現時点では完全に確立しておらず、当初の計画以上に進展しているとは言えない。
これまでの研究ではある程度計画通りに進展していると思われるが、マウスDA作動性ニューロンの分散培養系の確立について、現時点で大量のDA作動性ニューロンを含む培養系が確立できておらず、その原因もありDA含有小胞の分泌イメージング系の確立も完全には達成されていないことから、本年度はこの部分について集中的に検討実験を行い、早急に系を確立し、DA含有小胞の分泌イメージングアッセイによってCAPS2の有無が与える影響を検討する必要がある。また、アンペロメトリを用いた解析は現状ではセットアップができておらず、この系の確立についても早急に行う必要がある。
本年度は研究代表者が所属する研究室において準備できる機材、設備によって研究を遂行することが可能であったため。本年度に必要な経費としては、通常の消耗品費用に加えてアンペロメトリの導入を計画している。
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