研究課題/領域番号 |
25860172
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
加塩 麻紀子 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特任助教 (20631394)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | TRPM2 / 温度 / レドックスシグナル |
研究概要 |
マウス新生仔大脳皮質から得た培養ミクログリア細胞において、TRPM2の機能的発現が認められ、熱刺激に対する応答が過酸化水素によって増強し、その応答がTRPM2欠損細胞で消失することを確認した。マイクロエクスプラントカルチャーにより得た伸長軸索とミクログリアの混合培養により、変性軸索クリアランスへのTRPM2の関与を検討したが、野生型とTRPM2欠損細胞の間に有意な差を得ることができなかった。この結果は、ミクログリアにおけるTRPM2発現量が細胞ごとに一定でないことが原因と考えられた。 したがって、ミクログリアでの検討は難しいと判断し、同じくTRPM2が発現しており、グルコース、インスリンといった生理的シグナルにより活性酸素を産生する膵臓β細胞を用いた検討に移った。膵臓β細胞においてもTRPM2の機能的発現が確認され、熱刺激に対する細胞内カルシウム濃度上昇が過酸化水素処置により増大し、TRPM2欠損細胞で応答が消失することを確認した。また、膵臓β細胞に発現するTRPM2の体温下での活性がレドックスシグナル下で変化することで、β細胞からのインスリン分泌の調節に関わる可能性を検証するため、グルコースにより惹起されるインスリン分泌に対する温度および抗酸化剤(N-アセチルシステイン;NAC)の効果を検討した。その結果、インスリン分泌のNAC感受性の成分が、野生型ランゲルハンス島においては温度依存性に増大したが、TRPM2欠損膵島においては消失していることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミクログリアを用いた検討は、残念ながら達成できなかったものの、膵臓β細胞を用いた検討により、生理的レベルのレドックスシグナルにより体温下TRPM2の活性が調節されることで、インスリン分泌を促進的に調節していることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後、膵臓β細胞における熱応答が過酸化水素刺激による増強する現象を、ホールセルパッチクランプ法によっても確認する。また、in vitroで得られた結果が、in vivoにおいても再現できるかを検討するために、マウス個体を用いたグルコース負荷試験を行い、抗酸化物質の影響を検討する。得られた結果をもとに、論文を投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画の変更に伴い、当初計上していた細胞培養用の試薬、抗体、妊娠マウス購入費が不要となったため。 次年度に行う、in vivoグルコース負荷試験において、マウス購入費、血中グルコース測定キット、インスリンELISAキットに多額の費用が必要と予想されるため、繰り越し分と合わせて請求する。
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