哺乳類の生物時計中枢である視交叉上核の作動原理を理解するため、高解像の大規模光イメージングによる神経細胞ネットワークの可視化解析を行った。これまでに細胞内カルシウム濃度変化を指標に、視交叉上核の神経回路レベルの活動を捉えることを可能としているが、本研究ではさらに、細胞種ごとの活動や膜電位変動を捉えることを可能とした。また、時計遺伝子レポーター動物(PER2::LUC)から作成した視交叉上核に、アデノ随伴ウイルスを用いて高感度カルシウムセンサー(GCaMP6s)を感染発現させ、多電極ディッシュアレイ上に静置培養することで、時計遺伝子・カルシウム・神経発射活動の3機能を同一サンプルの同一領域から計測することに世界で初めて成功し、野生型動物において明瞭な3機能の概日リズムを観察した。特に各リズムの周期、振幅、位相差などの空間分布を詳細に解析し、Cryptochrome二重欠損動物の比較したところ、3機能全てにおいて振幅が減弱し、周期や位相差が不安定なリズムが観察された。特に各位相関係に特徴的な差異が観察された結果より、概日カルシウムリズムは時計遺伝子からの制御による制御と、細胞間連絡に由来する2種のカルシウム流入源があることが分かった。
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